開成、麻布、桜蔭、雙葉、筑駒、渋幕……東京・吉祥寺の進学塾VAMOSは、「入塾テストなし・先着順」で生徒を選抜しないが、「普通の子ども」を有名難関校に続々と合格させると話題の塾だ。子どもの特徴を最大限に生かして学力を伸ばす「ロジカルで科学的な学習法」が、圧倒的な支持を集めている。本稿では、VAMOSの代表である富永雄輔氏の最新刊『ひとりっ子の学力の伸ばし方』(ダイヤモンド社)から、特別に一部を抜粋して紹介する。

タブレット学習の意外な副作用「子どもの学力への負の影響」Photo: Adobe Stock

タブレット学習普及の「意外な副作用」

 子どもたちの中には、相手の言っていることを「脳内に留める」能力が低い子がいます。

 聴力はしっかりあって、耳に音としては入っているのだけれど、それをきちんと記憶できないのです。

 この一因となっているのが、オンライン学習の普及です。

 もともと学校の授業は、先生がある程度の分量のトピックを話していったん止め、またある程度の分量のトピックを話していったん止め……という形式で進みます。

 このとき、一定の長さの話題を記憶できないと、授業についていけなくなっていきます。

 しかし、タブレットで学んでいるときは、途中で止めて巻き戻せるので、一瞬の聞き逃しがあっても命取りになりません。

 そのため、「しっかり聞き取るぞ」という姿勢が子どもたちから失われているのです。

家庭での会話を増やして、子どもの記憶力と理解力を養う

 これは大問題で、解決するには普段から家庭でたくさんの会話を交わしていくしかありません。

 とくに、兄弟姉妹と話すことがないひとりっ子の場合、意識的に親が子どもとの会話を増やしてください。

 そのとき、たとえば、テレビをつけながら別の話をしたり、子どもには長すぎるセンテンスを話したりと、多少「乱暴なやり方」も必要です。

 兄弟姉妹がいれば、子ども同士でギャーギャー騒いでいるところに親が話しかけたりすることも多く、そこから自分にとって大切な情報を得る術をつかんでいきます。

 ところが、ひとりっ子は、普段から親が自分に対してだけ丁寧に話をしてくれるため、そもそも言われたことを覚える必要に迫られていません。

 また、ひとりっ子はかなりの割合で、早くからスマホを与えられています。そして、親ともLINEでやりとりをしています。

 LINEなどの文字情報は、あとから読み返すことができます。「6時半に東口の改札で待ち合わせしようね」ということも、会話で伝えた場合、耳に入った瞬間に覚えなくてはなりませんが、文字情報なら何度も確認できるから覚える必要はありません。

 LINEは便利ですから、私も家族とのやりとりに活用しています。しかし、子どもに考える力をつけさせる上では、こうしたネガティブな面もあるということを知っておいてください。

(本稿は、『ひとりっ子の学力の伸ばし方』からの抜粋・編集したものです)