上昇する物価と、上がらない給料、そして将来への先行き不安。そんな状況から「投資」を始めた人も多いのではないだろうか。しかし多くの日本人は「投資」と「投機」を混同している。「投資」は、短期間に株の売買を繰り返すことではない。選び抜いた企業のオーナーとなり、その成長を長い期間で楽しむのが「投資」だ。企業を選び抜くには、さまざまな分析と考察が必要である。その思考法が書かれたのが『ビジネスエリートになるための 投資家の思考法』(奥野一成)である。「投資家の思考法」を身につければ、投資はもちろん、あなたのビジネスも成功に導かれるはずだ。

「トヨタ・フェラーリ・テスラ」あなたならどこに投資する?Photo: Adobe Stock

3つの自動車企業の売っているものは何か?

 三択クイズを出します。後で私の考えを述べますので、答え合わせをするつもりで読み進めてください。

Q:車を生産・販売している3つの企業があります。このうち一つの企業に100万円投資するとしたら、あなたはどの企業を選びますか?

トヨタ自動車:言わずと知れた日本の自動車メーカーです。国内3割、世界1割の販売台数シェアを誇り、時価総額では長らく日本企業トップに君臨する、名実ともに日本を代表する企業です。
テスラ:鬼才イーロン・マスクが率いる電気自動車(EV)メーカーです。EV販売台数シェアでは世界トップの約2割を占めます。2020年に時価総額でトヨタ自動車を抜き、自動車業界1位となりました。
フェラーリ:イタリアの高級スポーツカー専門メーカーです。限定生産で価格帯3000万~5000万円のスポーツカーを中心に販売しています。深紅のボディカラーと跳ね馬のシンボルはあまりにも有名ですね。

 株価チャートや他の資料を調べても構いません。どの企業に投資するか決まりましたか? 答えを選んだ理由も覚えておいてください。

 では、私だったらこの3つの企業をどう見るのかお話ししましょう。

 まずそれぞれの企業が提供している財・サービスの性質、付加価値について考えてみましょう。3社とも自動車メーカーだと思っている人は多いと思いますが、私から見ると三者三様です。

 トヨタ自動車は言うまでもなく車を作っています。というより、車以外はほとんど何も作っていません。しかも車種が数え切れないほど多い。100万円ほどの軽自動車から、1000万円以上する高級車のレクサスまで価格帯も幅広いです。トヨタの自動車を利用する人は、その自動車を主に「移動の手段」として使用し、燃費の良さ、故障の少なさ、乗り心地の良さなどに価値を見出しています。

 一方、フェラーリも確かに車を作ってはいます。ですが、フェラーリのオーナーになる人は移動手段としてフェラーリを買っているわけではありません。「フェラーリを持っている自分」というライフスタイルに価値を見出しているのです。

 移動手段として買うなら、数千万円から数億円もする超高級車は必要ないでしょう。詳しくは後述しますが、フェラーリはブランドという高い付加価値を売っているのだと思います。

 ではテスラは何を作っているのでしょうか。

 今は主にEVを作っています。テスラが提供するEVは内蔵されているソフトウェアがアップデートされることにより、自動運転機能を含め走行性能が改善されます。いわば「走るスマホ」なのです。トヨタなどの普通の車も運転補助などのソフトウェアは搭載しているものの、あくまでハードウェア(車)にソフトウェアが搭載されているという基本発想です。これに対して、テスラの場合はソフトウェアのためにハードウェアがあるという逆転の発想を採っています。運転者の個人属性、走行距離、運転の乱暴さなどのデータをすべて取り込んでいきます。自動車保険事業をテスラが始めるのも当然の成り行きだと言えるでしょう。

 またテスラ保有者にとっては「走る電池」であるとも言えます。見た目は車だけれども、蓄電する機能を持った機器です。スマート家電などとつながることで、家での生活全体を取り込んだサービスに発展する可能性もあります。

 テスラは今はEVを作っていますが、10年後は全く違う事業になっている可能性が高いと思います。それに乗っている利用者も「未来的ななにか」に対して価値を感じ、1000万円以上のお金を支払っていると言えそうです。要するにテスラは、単純な自動車メーカーではなく、今後どんな業態になるかもわからない予測不可能な会社だと言っていいでしょう。