ステレオタイプの理解が“個別対応”を阻害していく
採用活動を行い、就労後も障害者と大きな接点を持つのが企業の人事担当者や専門スタッフ*1 だろう。就労支援機関の担当者同様に、企業の人事担当者の「人となり」が障害者の就労に大きな影響を与えていく。あらゆる業種の大企業や中小企業とコンタクトを続ける清澤さんに、“人事担当者の姿勢で注意しておきたいこと”を語っていただいた。
*1 “専門スタッフ”については、前稿「企業側の“専門スタッフ”の存在が、障害のある人の就労を定着させていく」参照
清澤 人事担当者の“過剰な熱意”は要注意ですね。「当社の障害者雇用は自分が何とかする!」といった感じで、人事担当者の思いが強すぎる場合があります。「思いが強すぎる」と、必然的に、その方が物事を抱え込むパターンに陥ります。たとえば、障害のある方の就労状況が悪くなると、「自分が全部解決しなきゃ!」と自分を追い込んでしまう。心身の不調が突然訪れるような精神障害のある方の雇用は、熱意だけではうまくいかないこともあります。結果、人事担当者であるその方自身が疲弊してしまい、心を病んでしまうケースも……そうなってしまっては元も子もありません。
また、企業全体で気をつけたいのは、「とにかく雇用しなければ!」という数字ありきの姿勢です。“数合わせ”の選考では、離職者が増えていきがちです。言うまでもありませんが、人員計画に基づいて、どういう人をどの部署で、どのような業務内容で、いつ雇用すべきかを検討していくことが肝要です。会社組織としての方向性が明確になったうえで、「まずは雇用率を達成する」という方向性もあり得るでしょう。しかし、その場合も、“定着”を目的にした雇用を意識しなければいけません。数字の達成が一時的にできたとしても、障害のある方を戦力化していく姿勢がなければ、いつまでも“数字合わせ”に腐心することになります。
いま、私がお勧めしているのは、障害者雇用を一部の部署だけで行うのではなく、部署をまたいで横断的に行う方法です。その方法なら、一部の部署だけが障害者雇用の責任を負うことなく、全社で障害者雇用を考えていくことができます。
また、症状に個人差があり、同じ個人でも日によって変化があるような精神疾患は、人事担当者の知識だけでは適切な対応や仕事の支援が難しいと清澤さんは語る。
清澤 精神障害は統合失調症が多く、多いからこそ、一般的な知識を拠り所とする人事の方もいらっしゃいます。教科書や書物の内容を、頭にそのまま入れてしまい、「統合失調症は幻聴や妄想を伴うもの」という思い込みが先行したりするのです。精神疾患は個別性が強く、症状が一人ひとりで異なります。その認識がなく、「この人は統合失調症だから、幻聴や妄想があるはず」などと考えてしまう。発達障害のある方に対してもそうですが、必要なのは個別対応であり、教科書どおりの対応ではありません。人事の方は勉強熱心ゆえに、実践よりも座学が中心となって、障害のある方をステレオタイプで見てしまい、また、かつて接した人を基準に、「以前に雇用した人が○○だったから、今度の人も○○だろう」という考えを持ってしまうこともあります。