コロナ感染予防で広がったテレワークの影響は?

 前稿「企業側の“専門スタッフ”の存在が、障害のある人の就労を定着させていく」の冒頭で記したように、新型コロナウイルス感染症の拡大は、障害者の働き方にも大きな影響を及ぼしている。2021年度は多少持ち直したものの、2020年度は障害者の就職件数が前年比で12.9%減少という数字を記録した。製造業・宿泊業・飲食サービス業などの求人減など、コロナ禍は就労を望む障害者にとって厳冬の時代ではないか?

清澤  ネガティブな数字もたしかに散見しますが、一方で、コロナによって、障害のある方の働き方が変わってきたことは注目に値します。“テレワーク”の普及がその主因です。在宅で仕事ができるようになり、これまでは、東京で仕事のできる人は、東京の事業所に通勤可能な人に限られていましたが、そうではなくなったのです。

 大企業や都市部の企業は、テレワークによって、「事務補助業務」が少なくなりました。コロナ前は、障害のある方の働き方として「事務補助業務」が主要な位置づけにあったのですが、従業員の出社頻度が減り、「事務補助業務」を生む紙ベースの仕事が減ったことが理由です。ただ、この傾向は、地方の就労支援機関や企業に私がヒアリングしてみたところ、大企業や都市部の企業に限られているようです。地方では、テレワークそのものの実施がなかったり、障害者雇用の求人でも「事務補助業務」が依然として多かったりします。その一方で、「地方在住で障害のある方たちは、事務補助業務しかできないのか?」というと、もちろん、そうではありません。テレワークという手段を使って仕事をしたい、あるいは、仕事が可能な障害のある方もたくさんいらっしゃいます。結果、大企業や都市部の企業は、テレワークの勤務形態で雇用のマーケットを地方にも作ることができました。つまり、地方に住んでいて、「事務補助仕事」を希望しない障害のある方を、東京の大企業が雇用できるようになったのです。採用面接から実際の仕事も、オンラインツールを使ってやりとりすれば問題ないでしょう。顔を合わせる機会が必要なら、月に1回程度、東京に来ていただけばいい。コロナによって拡大したテレワークが、障害のある方の雇用においても大きな可能性を見出しているのです。

“オンラインコミュニケーション”をベースにするテレワークにおいては、障害者の労務管理や健康確認といったマネジメントがことさら難しいように思えるが……。

清澤 たとえば、ある企業は、毎日、勤務開始時と終了時に人事部に所属している“専門スタッフ”が障害のある方とオンラインでミーティングしています。仕事の進捗や体調管理などの確認です。テレワークにおいても、専門スタッフがいることで、障害のある方は安心して働くことができ、雇用する企業側も適切なマネジメントができるわけです。