“キャリアアップ”のプランをしっかり用意できるか

 ダイバーシティ&インクルージョンメディア*6 の2020年・秋のインタビューで、清澤さんは次のように語っている。「(企業が)第一に考えるべきは、数字のための雇用なのか、戦力確保のための雇用なのか、です。つまり、法定雇用率という法律に基づく数字ありきなのか、障害のある方を戦力化していきたいのか――企業の担当者と経営陣はしっかりした意思疎通が必要で、その答え次第で、雇用管理の方法や業務の組み方が変わってきます」

 そして、よりいっそうの戦力となるために必要なのが、事業者と障害者のコンセンサスによるキャリア形成だと説く。

 今回のインタビューの最後に、清澤さんは、「障害のある方のキャリアプランをしっかり考えることこそが、企業の障害者雇用においては最も大切だ」とメッセージした。

*6 「オリイジン」インタビュー「障がい者雇用『ジョブコーチ』に求められる役割」参照

清澤 東京都内を見ても、キャリアプランのある企業での就労を望む方が多いですね。障害のある方を雇用するにあたり、経営者や人事担当者、専門スタッフがキャリア形成のプランを用意できるかどうかがポイントです。たとえば、面接の場面で、「就労後には、○○のかたちでキャリアアップができ、□□の場合に正社員の登用もあります」というふうに伝えられるとよいでしょう。キャリアアップの有無は本人次第でもありますが、その道筋を作ったり、環境を整えるのは企業の役割です。「あなたの雇用を、私たちは長期的にこう考えています」という意思表示のできる企業には良い人材が集まります。なかには、「小社ではキャリアは作れません」と隠さずに伝えるケースもあります。「キャリアアップはできませんが、まずは、小社で働く経験をしてみてください」と、障害のある方が次の職場に行くためのステップ役をその企業が担う姿勢です。キャリアアップすれば給料を上げる必要がありますから、採用時にお茶を濁すよりも、面接でそう伝えるのは正しい方法でしょう。あらかじめ示しておかないと、働き始めてから、本人が「キャリアップができないなら、この先どうなるの? 辞めるしかないの?」という不安に駆られてしまいます。いずれにせよ、「なぜ、障害のある方を雇用するのか、就労後にお互いがどうあるべきか」を、それぞれの企業が明確にしていくことが重要です。