アルコールによって、自然免疫の段階でマクロファージなどの動きが抑制されてしまうと、スパイ役の「樹状細胞」の働きが鈍ってしまう。さらに「T細胞」や「B細胞」などのリンパ球に対しても、アルコールは何らかの悪影響を及ぼすという動物実験のデータもある。

 このようにして免疫の防御システムの3段階すべてに対し、アルコールは悪影響を及ぼす。新型コロナのような感染症が流行する時期には、意識して飲酒量を減らし、免疫力を落とさないようにしたい。

◇飲酒習慣があるとコロナ予防に不利?

(池袋大谷クリニック院長・大谷義夫氏)

「頻繁にお酒を飲む人は、風邪をひく確率が低くなる」という研究結果がある。そう聞くと、風邪予防のためにお酒を飲もうと思う人もいるかもしれない。

 しかし、お酒を飲む習慣がない人やお酒に弱い人が風邪予防のために飲酒することは決して推奨されない。風邪予防のためにお酒を飲む必要がないと考える理由の1つが、新型コロナワクチン接種後の「抗体価」の問題である。

 国際医療福祉大学は、3回目の新型コロナワクチン接種後の、ウイルスの感染阻害能を示す「中和抗体価」を調査した。約1000人を調べた結果、習慣的に飲酒する人は抗体価が15%低かった。これを考慮すると、飲酒は免疫に悪影響を与える可能性が高い。

 新型コロナの感染を避けるためには風邪予防が大切になってくる。大谷氏が新型コロナの患者に聞いた話では、風邪をひきそうな場面で新型コロナに感染していた可能性があるという。

 風邪をひく前は体力が低下し、抵抗力が落ちる。その時に新型コロナを含んだ飛沫を浴びると、感染する確率がぐっと高まる。風邪予防のために酒を飲んではいけない。別の方法で風邪を予防すべきだ。風邪予防には手洗いうがい、規則正しい生活、食事の栄養バランスなどの基本的なことの積み重ねが大切だ。