駅前のラーメン屋で面会
取引先が救ってくれた

 私が資金繰りに窮し、相談に行ったとき、担当の課長からはそんなややこしい話を持ってこられても困る、という顔をされた。ただ、込み入っている話なので、会社で聞いている時間がない、駅前のラーメン屋で夜10時に会おう、と言われた。

 時間ぴったりに課長が現れると、注文していないのにビールとギョウザとラーメンが出てきた。おそらく常連だったのだろう。そして食事をとりながら私の話に耳を傾け、質問し、最後にこう言ったのである。

「そうか。話はわかった。今ここでは返事ができないから、また連絡する」

 電話があったのは、翌日だった。上司につないでくれたが、上司も忙しいので時間がない。日曜日に上司の家に行くことになった。そして最終的に、社長にまで上げてくれたと言う。

「まあ、わかった。しょうがない」

 お叱りを受けながらも、有難いことに売上の前払いをしてもらえることになったのだ。今ではコンプライアンス上の問題になるのでできないことだと思うが、当時は許される裁量の範囲だったと思う。ある意味、おおらかな時代である。

 もちろん、誠心誠意説明したことも大きかったと思うが、やはり大事なことは普段の仕事の姿勢だったのだろう。どれだけしっかり誠実にやっているか。信頼して将来も長く付き合える相手だと思ってもらえるか。見捨ててしまうのは惜しいと思ってもらえるか。

 富士通、沖電気高崎にも、同じように売上の前払いをしてもらい、会社は息を吹き返した。