私はコロナ禍のかなり前、茨城県に坪8000円で約30坪の市街化調整区域を買った。取得金額は約24万円で、ここに司法書士による所有権移転(登記)費用、仲介手数料等を入れても総額40万円未満で収まった。何故この土地を買ったか。不用品処分である。

 不動産サイトで「土地」を検索すると、基本的には更地が出てくるが、まれに「古家付き」とか「小屋あり」などと注記されている物件が出てくる。

 市街化調整区域は原則的に知事等の開発許可を得ないと構造物の建設ができないが、こういった物件はこの土地が市街化調整区域に指定される以前から建設されているもので、おおむね簡素な「掘っ立て小屋」とか「プレハブ」が立っていることが多い。上物を「住宅」として売ることがはばかられるので、土地に「古家付き」として売りに出されているのだ。

固定資産税は
年間たった2200円

 このような物件を倉庫として活用するのが目的である。私の家は65平米の古民家だが、蔵書が一時期6000冊に及び、部屋に本があふれる状態となった。古本屋に引き取ってもらっても一冊1円などと言われた日にはへこむ。かといってこの量の古本を捨てるのも一大事業である。物を捨てるにも「処分費」がかかる時代になった。そこで自宅以外にどこかへ格納できないかを考えた。

 現在、「収納スペース」がはやっている。地主が遊休地にコンテナ等を設置し、1~2畳程度のスペースを月額8000円などの値段で貸し出すというビジネスである。限られた住宅空間を物に占領されたくない――。「断捨離」が言われて久しいが、思い入れのある物品を全部捨てたりフリマアプリを駆使して売ったりするまでの時間も大胆さもない――。こういった人々のニーズに収納スペースビジネスは合致している。

 しかしよく考えると、月額8000円の収納スペースは、1年で9万6000円、2年で19万2000円、5年借りると57万6000円の単純コスト計算になる。果たしてこれはCP(コストパフォーマンス)的に妥当なのか。

 契約が終われば中身はどのみち処分せざるを得ない。ならばいっそのこと、半永久的な所有権のある「古家付き土地」を買った方がいいのではないか。そう思って、額面予算30万円程度で首都圏近郊の物件を検索してみると、出てくるわ出てくるわ、お宝物件の宝庫だった。

 私は現地に足を運び、倉庫として十分耐えられる「古家付き土地」を買った。登記簿によると古家は前所有者が80年代前半に建設したもので、約8坪の広さだった。ワンルームより少し広いくらいの物件である。たった数畳のコンテナを月額8000円で借りるよりもはるかに広い物件を独占できるのだ。

 ここに私は5000冊の蔵書と不用品を詰め込んだ。土地自体は30坪あるので、余地部分にカースペースは十分確保できる。物件周辺は農村地帯で、バブル期前後に建設された別荘地があるなどの他、目立った人家はない。深夜に出入りしたり、BBQをやっても誰からも文句を言われない。最高だと思った。

 それでも維持費がかかるだろう、と思うだろうが土地自体の評価額が低すぎて自治体から請求される固定資産税は年間たったの2200円。月にすると約183円である。将来この物件周辺の評価額が上がるとも考えづらいので、維持費としてはこの限りである。物件取得時に一回のみ払う不動産取得税は4000円ぐらいだった。首都圏から高速で1時間強の場所にある交通至便の地域だが、ほぼゼロ円で維持できるのだ。