不動産仲介サイトにない物件を
購入できる可能性も

 とはいえ夏は暑いのでクーラーを設置することにした。東京電力に電力供給を頼むと、無料で電線から室内に電気を通してくれた。冷蔵庫も置いた。月額の電気料金は1100円というところである。これで倉庫が手に入るなら安い。室内をリノベーションしてくれるという業者に頼んで、壁紙を交換してもらってモダンな雰囲気に改装した。この物件の取得から丸8年近くがたっているが、元は十分取ったと思っている。

 首都圏から車で1時間程度の物件であっても、市街化調整区域は値段が付かず、大体坪8000円~1万2000円で売りに出されている。

「家庭菜園、資材置き場などにどうぞ」などと書いているが、現実的には置き場は別として家庭菜園にするのは不可能に近い。雑草の繁茂がすごすぎて、到底作物を育てる菜園に転用することはできないからだ(実際のところ、除草剤をいくらまいても死滅しない)。しかし倉庫として考えた場合は、十分すぎる活用方法が用意されている。

 市街化調整区域は、都市計画法に基づき厳しく建築が規制されている。よって住宅は建設できない。一方、基礎を要さないプレハブやユニットハウス等は設置できるのかというと、これも原則できない。だから古家付きではない市街化調整区域の土地を取得した後、そこに物置を建てようとしても法的には違法建築になる。

 しかしソーラーパネルの設置はこの限りではない。また駐車場に転用する場合もこの限りではない。市街化調整区域の活用方法は、工夫すればいくらでもある。ただし当然、そのような利用には周辺住民(存在する場合)との折衝が必要となる場合もあるから、何でも自由というわけではない。ただそれを差し引いても、坪1万円程度で手に入れることのできる首都圏近郊の零細市街化調整区域は魅力だ。

 このような市街化調整区域は、不動産仲介サイトで検索するのが一般的だが、地主側が売却を諦めて仲介にすら出さないケースも多いので、明らかにこれと決めた物件があれば、法務局に行って登記簿を調べ、「当該土地○○万円で購入を希望する」という手紙を地主に送っても良い。

 ただしこれでは時間がかかるし、返信が来るかどうか分からないので、BITを利用して競売物件に入札するのも手である。

 不動産競売の手順が全く分からない、という人でもちゅうちょする必要はない。「私は初めての入札で何も分かりません」と裁判所の窓口で言えば、手順を記されたパンフをもらえる。不動産競売は素人でも簡単にでき、所有権移転手続きを裁判所がやってくれるので司法書士費用等がかからないメリットがある。当然のことだが落札できなかった場合は全額返金されるから安心だ。

 上物の占有者がいない土地競売の場合、立ち退き問題が発生しないから落札後のトラブルが起こりにくい。管理費や修繕積立金を巨額滞納しているマンションなどの区分所有権を落札するよりはよほど難易度が低い。こういった手段の活用もありである。