民主主義発祥の地はどこか?
――本書を読んで、岩本さんが一番驚いたことはどんなことでしょうか。
岩本 何よりも、民主主義の起源が古代ギリシャではないという点ですね。著者はこの通説を、19世紀に語られ始めたロマンチックな物語だと一蹴しています。確かに紀元前5世紀ぐらいにギリシャで唐突に生まれたというお話は、ストーリーとしてはおもしろいんですよね。
著者は、民主主義の原型は現在の中東のシリアやイラク、イランあたりの地域で生まれたと伝えています。民主主義が西洋オリジナルの政治体制だという言説は、単なるでまかせだという主張です。現在では、紀元前2500年ごろの中東で民主主義の原型が生まれたというのが専門家の間で定説になっているようです。
――おぼろげな記憶ですが……、私たちが学校で習った内容とは違いますね。
岩本 そうですよね。私もこの史実を知った時は驚きました。ただ、確かに冷静に考えると、紀元前のとある時期に、ヨーロッパの特定の地域で、突如民主主義という政治制度が花開いたと考える方が不自然といえば不自然です。なぜならば、経済や政治、文化というのは、それぞれの地域が互いに影響を与え合って発展するのが自然だからです。
そう考えると、世界最古の文明が栄えた中東の地域にすでに民主主義の原型があり、古代ギリシャに影響を与えたと考えた方が腑に落ちます。