会計士・税理士・社労士 経済3士業の豹変#8Photo by Yoshihisa Wada

KPMGジャパン チェアマンの森俊哉氏は四大会計事務所で唯一、監査法人理事長を兼務する。かつてKPMGジャパンはコンサルティング事業を分離したが、森氏は「一流の監査」を行うためにも再び分離することはないと断言する。特集『会計士・税理士・社労士 経済3士業の豹変』(全19回)の#8で、その理由を聞いた。(聞き手/ダイヤモンド編集部副編集長 重石岳史)

1年間で監査クライアントが156社も減少
それでもあずさが目指す「一流の監査」とは?

――森さんはKPMGジャパンのチェアマンであると同時に、昨年7月からあずさ監査法人の理事長も兼務しています。まず兼務することになった経緯について教えてください。

 監査法人の選挙で理事長に選ばれ、チェアマンの職務は誰か他の人にということは考えていたのですが、KPMGグローバル チェアマンのビル・トーマスから「日本のチェアマンを続けてくれ」と依頼が来たんです。それをむげに断るわけにもいかないので。

 あと、コロナ禍でグローバルボードの会議はずっとリモートでしたので、それなら出張もなく、物理的に続けられるかなと。時差の関係で夜ミーティングするのはちょっと面倒くさいんですけどね(笑)。

――四大会計事務所でグループのトップと、監査法人の理事長を兼務している人は他にいませんが、高い独立性が求められる監査法人と、コンサルティングを含めたグループ全体の収益責任を負うチェアマンを兼務することに問題はないのでしょうか。

 独立性の問題は、ルールに従って厳しくやっていますので問題は生じません。それにKPMGは、グループの利害関係を公平に考える文化が根付いていると思っています。

あずさ監査法人の2022年6月期末の監査先は3482社で、前期末から156社減らした。減少の理由について森氏は「お付き合いができない」と判断し、監査契約の締結・更新をやめた会社もあったと明かす。

また、競合のEYで検討されている監査とコンサルの分離について、森氏は「一流の監査」を実現するためにKPMGは検討しないと断言した。あずさが目指す「監査像」とは一体何か。次ページから明らかにしていく。