会計士・税理士・社労士 経済3士業の豹変#10Photo by Yoshihisa Wada

デロイト トーマツで今年6月、54歳の木村研一氏が史上最年少のグループCEO(最高経営責任者)に就いた。約1万7000人が在籍する国内最大の会計事務所を、若きCEOはさらなる成長に向かわせるという。特集『会計士・税理士・社労士 経済3士業の豹変』(全19回)の#10は、デロイトが狙う企業買収や人材獲得戦略を解き明かす。(聞き手/ダイヤモンド編集部副編集長 重石岳史)

「最強」グループが経営層の若返りへ
狙いは日本のプレゼンス向上

――木村さんは今年6月、54歳でデロイト トーマツ グループCEO(最高経営責任者)に就任されました。グループCEOとしては史上最年少です。また同じタイミングでグループCOO(最高執行責任者)に就いた長川知太郎さんは40代。今回の人事はグループの若返りに向けたメッセージと解釈していいでしょうか。

 そうですね。日本のエグゼクティブを経験し、その後にデロイトのグローバルで活躍してほしいという狙いはあるようです。私がそれを希望しているかどうかはともかくとして(笑)、キャリアのゴールを日本だけじゃなくて、もっと世界にと。それにより日本のプレゼンスが上がります。

――今はその過渡期にあると。

 ええ。われわれの定年は62歳です。1期4年なので、僕も年齢的にギリギリなのです。他国出身のグローバルのリーダーはすごく若い。日本もその水準に合わせていかないといけない。

――ではグループのトップとして、デロイト トーマツの成長戦略をどのように描きますか。

 われわれにはMDM(マルチ・ディシプリナリー・モデル)という考え方があって、要は大学にさまざまな科目がそろっているように、グループの中に監査やコンサルティングといったさまざまなエンティティを持っている。

 この間口の広さを強みとしていますが、デロイト トーマツは、これは自慢なのですが、その一つずつが全て日本一強いのです。

 監査の業務収入は、EY新日本さんの方が30億円くらい多かったですが、会計士の数はトーマツの方が多い。タックス(税務)もコンサルも一番大きいし、リスクアドバイザリーもFA(ファイナンシャルアドバイザー)も大きい。

 それぞれにビジネスの強さがありますが、それを二つでも三つでも組み合わせると、最強になる。

監査法人トーマツの監査証明業務収入は861億円(2022年5月期)だ。EY新日本監査法人の896億円(22年6月期)に30億円強及ばなかったが、国内最大級の監査法人といっていい。さらにコンサルティングやファイナンシャルアドバイザリー、税理士法人などグループ各社の総収入は3129億円に達し、四大でナンバーワンだ。木村氏が言うように、確かに「最強」の呼び声が高い。

だが、それで満足する気配は、木村氏にはない。さらなる拡大に向けた買収や人材獲得の秘策について、木村氏が明かす。