コンサル業界で人材の引き抜き合戦が過熱している。社員を引き抜かれ、訴訟の原告ともなった業界大手のデロイト トーマツ コンサルティング(DTC)は、人材獲得競争とは一線を画し、内部人材の育成に注力する構えだ。およそ10回にわたり公開予定の特集『勝ち組に死角!コンサル大混戦』の#9では、同社の採用や育成、キャリア開発を統括するチーフ・ピープル・エンパワーメント・オフィサー(CPEO)の長川知太郎執行役員へのインタビューをお届けし、社員1万人への増員計画や人材流出防止の秘策について詳報する。(ダイヤモンド編集部 重石岳史)
DXのコンサルティングニーズが爆増!
業界で人材の「引き抜き合い」が過熱
――コンサルティング業界では人材の獲得競争が激化していると聞きます。現状をどのように分析していますか。
ご指摘の通り、取り合いの様相を呈しています。
「コンサルに転職してもいいな」と思う人の発生確率が、それほど大きく増えているわけではない。コロナ禍で新しい職場にチャレンジすることに、壁を感じている人も多いと思います。
採用市場のパイが大きくなったわけではない。しかしデジタル技術の進展が加速度的に進み、DX(デジタルトランスフォーメーション)でより効率性の高いビジネスモデルに置き換えるという市場の再定義が起きた。そうした中で、デジタルのバックグラウンドがある人材のニーズが爆増しているわけです。
それに対応するため、各社がタレントを取り合う。報酬に色を付けたり、海外駐在の権利を付けたりといった引き抜き合いが実際に起きている。
その条件が過度になり、例えばマネジャーをシニアマネジャーのランクで引き抜くようなことがある。これは私見ですが、タイトルと実力とが釣り合っておらず、その人材をマーケットに送り出したとき、コンサル業界としてクライアントの信頼を失うのではないかと危惧しています。
では限られたパイの取り合いがある中で、われわれとしてはどうするか。そこを説明したいと思います。
次ページでは、長川氏から驚きの「コンサルタント1万人爆増宣言」が飛び出した。現在の4000人規模から倍以上だ。その実現のために新卒と中途の採用方針や両者のバランスを抜本的に変えるという。加えて、長川氏は「秘中の秘」である流出防止策も特別に開陳。さらに日本の某所に「デロイト大学」を創設するという意外な構想も明らかになった。増員計画はもちろん、1万8000人規模のコンサルを抱えるアクセンチュアに対抗するため。果たしてデロイトの“人材革命”は成功するのか――。次ページで明らかにしていく。