監査先を減らしている四大監査法人とは対照的に、近年クライアント数を増やしているのが準大手の太陽監査法人だ。一体なぜ太陽は監査先を増やすことができるのか。特集『会計士・税理士・社労士 経済3士業の豹変』(全19回)の最終回は、山田茂善総括代表社員(CEO)が、太陽躍進の秘密を明かす。(聞き手/ダイヤモンド編集部副編集長 重石岳史)
1年で上場会社の監査先が46社増加
「採算重視」の四大に対抗、太陽の独自戦略
――太陽監査法人の監査クライアント数が急増しています。この理由は何でしょうか。
私の個人的な感覚ですけれど、やはり大手(四大監査法人)が採算重視になり、固定費等々の費用を踏まえ、(クライアントに)ある程度の規模がないと採算が合わないという考えになってきているのかなと思います。
例えば「10」の監査報酬を「15」に値上げすると言われたら、誰でも「え!?」ってなりますよね。大手から「もう他(の監査法人)に行ってください」という趣旨のことを言われたという会社もあるようです。
太陽監査法人の使命は、公共財の提供者として資本市場を守ることです。規模の小さい会社であっても、できる限りカバーしなければならない。
もちろんある程度の“すみ分け”もあります。例えば「トヨタ自動車の監査をやれ」と言われても、私どもでは物理的に無理です。だいたい売上高1兆円未満の会社であればわれわれでも対応可能なので、そういった会社がうちを指名してくれるケースが増えています。
――新規のクライアントは、もともと四大の監査を受けていた会社が多い。四大から太陽へクライアントが移る傾向は、今後も続くのでしょうか。
1971年設立の太陽監査法人は、約300人の公認会計士が所属する準大手の監査法人だ。特筆するべきは、近年の監査クライアント数の増加にある。今年6月末時点で上場会社の監査先は310社に上り、1年で46社が増えた。EY新日本、あずさ、トーマツ、PwCあらたの四大監査法人が軒並み監査先を減らした一方、その四大などから新たに監査先を引き受けた形だ。
だがここで疑問に感じるのは、四大が「採算重視」で監査先を絞り込む中、なぜ太陽だけがクライアント増に対応できるか、だ。会計士の不足など苦しい台所事情は、どの監査法人も変わらないはずだ。山田氏にその疑問をぶつけると、四大とは正反対の、特異な戦略が見えてきた。