「死」は、待ったなしに突然やってくる

──だいたいどれくらいかかったんですか。

野沢:うちの場合は、入院も2ヵ月くらいで、告別式も本当に一番安いプランにしていただいたので、そんなにかかったわけではないんですけど、なんやかんやで100万円以上はかかりましたかね……。具体的にはあんまり思い出せないんですけど。大袈裟と思う人もいるかもしれないけど、蓄えがなかったので、急にそれを出すってなると、結構大変だったんです。

──息子さんの学費の懸念もあった、と書かれていましたよね。

野沢:そう。当時、息子が18歳で、進学するか就職するか考え中、という時期だったんです。アメリカの大学って、学費がすごく高いんですよ。下手すると月に40、50万円くらいかかる大学もあるんです。

「命の終わりにはお金がかかる」親の死で直面した介護の壁

──毎年とか半年じゃなくて、毎月ですか?

野沢:そう、毎月50万円。彼がやりたかったのはコンピューター関係の仕事だったので、学費が高い学校ばかりだったんです。もちろん、ローンを組んで本人に払ってもらうケースも考えたけど、それでも、息子のためにちょっとでも貯金しておきたくて。父の入院や介護の話が出てきたのは、そんなときだったんです。「えー、このお金、こっちに使うしかないのか!?」ってなっちゃって。

──いや、タイミングが。

野沢:冷たいな、と自分でも思うんですけど……。正直に言うと、即座に浮かんだのは「老い先短い父親よりも、息子の未来にお金をかけたい」という気持ちでした。でも、じゃあ親を見捨てるのかっていうと、それもできないし。こんな地獄みたいな選択、みんなやってんの!? と思って。

 いままで他人事だったのに、「死」って、待ったなしに突然、自分の現実としてやってくるものなんだと、愕然としました。

──私も、野沢さんのエッセイを読んで驚きました。普通に死ぬだけみたいなイメージを持っちゃってたから。

野沢:驚きますよね。人間って、綺麗に死んでいくわけじゃなくて、人の労力もお金もかけて死んでいくものなんですよね。よく考えたら当たり前のことなんですけど。

 でも、「絶縁してやる」「早く死ねばいいのに」と思っていたのに、実際に死んでしまうと、自分でも信じられないくらい泣いちゃってたんですよね。私が単純なだけかもしれないけど(笑)。