世界の中央銀行は忍耐を強いられている。各国中銀は今年、数十年ぶりのペースで利上げしている。だが、経済学者らが言うように、利上げの効果は「長く変わりやすい」遅れ(ラグ)を伴うため、利上げが過大だったか不十分だったかが明らかになるのは数年後という場合がある。なぜラグが生じるのだろうか。金利の変更がインフレに波及するまでには、いくつかの段階を経る。中銀によって管理される短期貸出金利が、家計や企業の預金・融資金利といった経済の他の借り入れコストに波及するまでに一定の時間がかかる。融資契約の変更はすぐにはできないためだ。借り入れコストが上昇し、資産価格が下落すると、家計と企業は借り入れや投資を控える。その結果、売り上げは落ち、企業は値上げが難しくなり、労働者は賃上げを獲得しづらくなる。それでも、事業計画を撤回したり人員を削減したりするには時間がかかる。ずっと前から購入を検討していた車やキッチンを思い切って買う消費者もいるだろう。企業は今後の見通しが変わったと確信するまで人員削減を見送るかもしれない。
中銀を悩ます利上げの「やめ時」
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