「10年後にぐっと成長する企業」伸びる前の前兆とは

──「10年後にぐっと成長する企業」の、見極めのコツのようなものはあるのでしょうか。伸びる前の前兆など、ありますか?

奥野:やっぱり、「自分の強みを使った戦略」を、その会社の中で考え出していること。これに尽きると思います。

──自分の強みを使った戦略。

奥野:例を挙げたほうがわかりやすいかもしれませんね。たとえば、私たちの投資先企業の一つに、テキサス・インスツルメンツという、半導体の開発・製造を行う米国の企業があります。彼らの強みは、なんといっても、「TI.com」を起点とした価値提供の仕組みができていることなんですよ。

──「TI.com」?

奥野:テキサス・インスツルメンツの製品を販売する、専用のWebチャネルがあるんです。大雑把にたとえるなら、アマゾンのB to B版プラットフォームのようなものを持っている、と考えてもらうとわかりやすいでしょうか。彼らは約8万種類にも及ぶ製品ラインナップを持っており、顧客はこれを活用して製品の購入ができる。そして、「この顧客は何を買ったのか」「この製品のこのデザインを見るのにどれくらいの時間を使ったか」などの顧客情報は、データベースに蓄積されていく。テキサス・インスツルメンツの営業部隊は、それを活用することで、顧客に対し効率的に営業活動ができるわけです。

──それはすごいですね。蓄積されるデータを使って、どんどんいい製品ができそう。

奥野:私たちが、テキサスに最初に話を聞きにいったのが、2018年ごろのことでした。そのとき、この「TI.com」のシステムのことを知ったんです。「2013年ごろからこの取り組みをはじめた」と言っていたので、話を聞いた時点では、まだ運用して5年くらいの、比較的新しいプロジェクトだったんですね。

──それを聞いたとき、「これはテキサスにしかできない、『自分の強みを使った戦略』だ」と思いましたか?

奥野:思いましたね。もう明らかに、テキサスだからできる戦略だと思った。極めて合理的で、他社が真似できないものがある、と。いまの株価がどうとか関係なく買いたい、投資したいと思うのは、企業のそういう強みを見つけた瞬間ですね。