テスラ車の部品同士が通信網を使い「ツイート」し
AIがそれを学習する未来が来る

 すでにこのような未来に対して、イーロン・マスク氏率いるテスラはツイッター買収以前に3つの布石を打っています。

(1)垂直統合の製造体制
(2)ECU(エレクトリックコントロールユニット)の集約
(3)自前の充電インフラ

 この3点が、自動車産業全体が次のフェーズに移行した際に日本車陣営が脱落する落とし穴だと言われています。

 日本車はピラミッド型の協力会社によって水平分業する形で車の部品の設計、生産が行われています。それに対してテスラは極力、テスラ一社で自動車を生産できるように設計し生産しています。ですから、テスラの部品はお互いにつぶやきやすくできているのです。

 二番目のECUの集約が実は日本車の一番の弱点です。日本車は部品同士の連携がすごくやりづらい設計思想になっています。各部品メーカーが自分の領域の部品のコントロールのためにバラバラに開発した、20以上のコントロールユニットが搭載されているからです。今はそれが「半導体不足」という理由で、業績の足を引っ張っています。しかし、コネクテッド化の時代になると「船頭多くして船、山に上る」的な連携障害になっていきます。

 一方、テスラの場合は自前で設計した(つまりブラックボックスがない)ごく少数のECUで車を制御しています。そのため、クルマをコントロールするOSのアップグレードが比較的容易にできるのです。これは偶然などではなく、次世代の車の到達地点を最初から考えているからこそできるわけです。

 そしてテスラが自前の充電設備のネットワークに今のうちから投資しているのは、最終的にコネクテッド化されたEV車が都市の電力インフラ(エネルギーグリッド)として機能することまでを構想に織り込んだものなのです。

 そこに今回、4番目の武器としてツイッターがテスラ陣営に入ってきたわけです。来るべきIoTの時代には、テスラ車の部品同士が通信網を使用して、無数のツイートやリツイート情報を発信し交信することになるでしょう。

 それらの情報の大多数はジャンク(意味のない情報)であるわけですが、ごく一部はモビリティ社会として非常に重要な情報になる。砂漠の砂からダイヤを見つけられる企業が勝つ時代に必要なことは、ビッグデータを支配する企業能力、言い換えればエンジニアの物量と質、そしてAIとクラウドにつぎ込めるカネということになるはずです。

 それをイーロン・マスク氏はわずか6兆円で手に入れたのです。