自動車の部品が
「つぶやく」時代が来る

 例えば、こんな未来です。

 第一段階では今、ツイッターでよくリツイートされているドライブレコーダーの動画のように、ドライブレコーダーが自分でつぶやき始めるかもしれません。

「わしはドライブレコーダーだが、今、目の前で事故起きたんで見てくれんかな」とか、「前を走ってるレクサス、5ナンバーだということは盗難車ちゃうやろか?」とか、機械なのに勝手につぶやきだすわけです(注:IoTで部品がつぶやく言語は、実際にはわれわれの言語とは異なります。また部品のつぶやきがTwitter上に投稿されるわけではありません。記事内では擬人化して表現してあります)。

 これが第二段階になると、車の内部で部品同士がつぶやきだします。

「なんかブレーキ、踏まれ過ぎとちゃうか?」
「たしかに。わしはパッドやけどずいぶんすり減ってきたわ」
「こっちはエンジンやけどそもそもエンジンブレーキ、利いてへんで。なんかコントロールユニットがバグってるんとちゃう?」
「とにかくドライバーと販売店、両方にアラート出しとこうか?」

 みたいに連携してくれるようになります。

 第三段階になると車同士で語り合ってくれるようになります。

「自動運転モードで燃費が悪いのは、こりゃ車の責任だよな」
「同じ車種の別の車だけど、主に加速のときに燃費を下げとるようだぜ」
「他の車種はどう?」
「オレの車は急加速はしないようにしとる。テスラ全体でそうしたほうがいいんとちゃうやろか?」

 日本人はIoTというと、部品が個別に自動車メーカーのマザーコンピューターにつながって不具合を報告するようなイメージで考えがちです。しかし、実際のIoTはこのように部品同士がツイートしたり情報を拡散しあって、リツイートの多い不具合に注目が集まるようなSNS型のネットワークを想定したほうがより未来に近いはずです。

 さらに第四段階となると車と行政がつながります。

「この交差点、いつも無駄に直進信号が長いうえに、右折信号短かすぎだよ」
いいねとリツイートした車が500台。
「そろそろ行政が動いてくれてもいいんとちゃうかな」

 みたいな感じです。

 車の場合、郊外を走ることも多く、日本でも山間部に入れば携帯は圏外になりますし、国土の広いアメリカならなおさらそうでしょう。そんなときも、マスク氏が経営するスペースXを利用して宇宙経由でのナビも可能です。

「盗難車、州境を超えて砂漠に逃げ込むで!」
「大丈夫デス。補足シマシタ」

 みたいな感じでしょう。

 基本的にコネクテッド化の時代には、クルマの内部部品同士、そして同じメーカーの部品同士、ひいてはそれらの無数の車から発信されるビッグデータ情報がすべてつながり、有効な形で解析されて、モビリティ社会全体をカイゼンしていきます。

 これはそれほど遠い未来の話ではなく、2025年から2030年ぐらいの未来ではそのようなフェーズに自動車産業が移行していきます。