北京から市外に出た人たちが自宅へ戻れない

 北京の衛生担当局の問い合わせ窓口に電話をしても、味気ないAIの決まりきった応答が続くばかりで、いつまでたっても係員にはつながらない。80代にとってこんなやり取りはどれほど大変だっただろうと想像したが、夫人のこんな書き込みに思わず笑ってしまった。

「AIが対応しますって胸を張るけど、その応答も提案してくる選択肢もお決まりのものを繰り返すばかり。人間を見習ってもっと気の利いた対応ができるようになるにはまだまだね」

 この期に及んでこの余裕。さすが80代で「出張」に出かけるだけのパワーのあるご夫婦である。

 だが結局、「7日間の自己隔離とはいつから数えるのか?到着した日から?それとも帰る準備を始めた日から?」「湖州より北京のほうが感染はひどいのに、なぜ北京の自宅に帰れないのか?」……そんな二人の疑問は解決されないままだ、と書き込みでは訴えていた。

 この例以外にも、北京から市外に出た人たちが「自宅に戻れない」というケースがますます増えている。

 5日から上海で開かれている中国国際輸入博覧会に北京から取材に行った記者たちの間でも、帰京しようとしたら健康コードのポップアップに阻まれてチケットが買えないと騒ぎが起きていた。SNSを使って必死に同博覧会の主催者に「対応してほしい」と頼み込む政府系メディア関係者のやりとりをキャプチャしてシェアした友人がこうつぶやいていた。

「お前ら、国の宣伝機関なんだから、寄ってたかってペンの力を使えばどうにかできるはずだろ?」