「いい会社」はどこにあるのか──? もちろん「万人にとっていい会社」など存在しない。だからこそ、本当にいい会社に出合うために必要なのは「自分なりの座標軸」である。そんな職場選びに悩む人のための決定版ガイド『「いい会社」はどこにある?』がついに発売された。20年以上にわたり「働く日本の生活者」の“生の声”を取材し、公開情報には出てこない「企業のほんとうの姿」を伝えてきた独立系ニュースサイトMyNewsJapan編集長・渡邉正裕氏の集大成とも言うべき一冊だ。
本記事では、なんと800ページ超のボリュームを誇る同書のなかから厳選した本文を抜粋・再編集してお送りする。

【現役社員に聞いた】過去30年で最も給料が下がった業界は?Photo: Adobe Stock

過去30年で最も給料が下がった業界
──メガバンク給与の実際

 前回に引き続き、縦軸に35歳時点での手取り年収を、横軸に平均勤続年数をとって、マッピングした次の図をもとに、職場選びの考え方を見ていこう。

 今回も右上「④プラチナ昭和企業」の部分を掘り下げていくことにする。このエリアは財閥系が多いが、メガバンクは、過去30年で最も給料が下がった業界である。

 筆者が就活した90年代半ばはまだ都銀が10行あり、メガバンクという言葉はなかった。それが、4つ(みずほ、三菱UFJ、三井住友、りそな)に集約される過程で、ダブった部長・支店長ポストがどんどん減り、公的資金を注入して不良債権処理を行ったために、さすがに高給をそのまま維持することもできなかった。

 かつてトップ昇進組の「30歳1000万円」が当たり前だった給料は、どうなったのか。みずほ銀の法人営業社員(総合職)に聞くと、「自分は30代後半の課長代理で、額面900万円くらい。同期の半分はこの課長代理で昇格が止まりますが、それでも個人成績をがんばれば、1000万円いきます。その上の課長で、約1000万円。『課長になれればいいな』という感覚を、みんな持っていると思う。課長、次長、支店長のラインに乗っていない人は45~50歳で関連会社へ出向、転籍となり、50代は700~800万円で過ごし、定年まで雇用は守られます」(地方支店勤務)

まだまだ「贅肉」があり、
コストカットの余地はある業界

 35歳なら、地方支店でも額面900万円弱。本社部署なら、残業代も多くついて1000万円に乗る。かつては課長代理で1000万円だったので、20年間で100万円くらい下がった印象があるが、まだまだ悪くない。

 ゼロ金利政策で融資が儲からないとはいえ、日本は世界でいちばん遅れているくらいに銀行がアナログの労働集約産業だったため、デジタル化・キャッシュレス化で支店が不要になり、駅前の一等地を売却したりテナント運用するなど、いくらでもコストカットや収益化の余地がある。

 マスコミと同様、本当に贅肉だらけで資産リッチな業界なのだ。とはいえ、子どもの教育費などで資金需要が高い50代に、同期の半数が関連会社へ出され、年収200万円ほどダウンというのは、なかなかに厳しい現実である。

日本一の投資対効果を誇る職業「パイロット」

 パイロットは労組が強く、高賃金を維持している職種だ。

 ANAは自社養成枠と航空大卒枠で半々ほどだが、計100人超を採る年もあればゼロの年もある。自社養成では、訓練生を経て28歳ごろに副操縦士になり、職務手当だけで年600万円もついて年収は約1600万円に。あとは、飛んだ回数と距離、年齢給、担当機種によって自動的に給料は決まり、40代後半で「定期機長」というランクに。

 機長の職務手当は月76~85万円で、それだけで1000万円超だ。機長1年目で、年収2500万円が相場だという。50代で部長になってもまだ飛び続ける。ハードワークではあるが、額面3000万円である。

 医師と比べ著しく恵まれているのが、パイロットのライセンスを取得するまでの費用だ。「1人をパイロットにするのに6000万円かかると言われ、そのうち、航空大の学生は、政府の負担で国立大くらいの学費です」(ANA中堅パイロット)。

 国立大程度の学費でライセンスをとれ、生涯賃金は8億円超にもなる。自社養成コースなら、それすらかからないどころか、逆に給料をもらいながらライセンスを取得する。投資対効果という点では、日本一優れているだろう。

(本記事は『「いい会社」はどこにある?──自分だけの「最高の職場」が見つかる9つの視点』の本文を抜粋して、再編集を加えたものです)