「あの人の名前、何だっけ?」がなくなる画期的メソッド

医療が進歩して平均寿命が延びていく中で、健康でいられる期間をのばしたいと考える人は多いだろう。しかし、体の健康と同じくらい重要な脳の健康について、どのくらいケアしているだろうか。「老化に対してつらい、苦しいという気持ちではなく、楽しみながら老化のスピードを遅らせることができればと考えている」と話すのは、『1分間瞬読ドリル』の著者である山中恵美子さんだ。本書は子どもからシニアまでが、楽しみながら脳トレができる。山中さんに、シニアの方が脳をトレーニングする重要性、『1分間瞬読ドリル』がシニアに向いている理由を聞いた。(取材・構成/久保佳那 撮影/疋田千里)

「言葉が出てこない」「思い出せない」を減らす

――『1分間瞬読ドリル』を実際にやってみて、「脳が働いているな~」と感じました。私は本で設定している読者ゾーンでは「大人」になりますが、シニアの方を特に意識しているのでしょうか。

山中恵美子(以下、山中):「人生100年時代」と言われるように、健康に生きられる時間は伸びてきていますよね。年齢を重ねた方は実感されていると思いますが、体だけでなく脳が健康であることが必要になってきています。

 シニアの皆さんが望むこととして、「どうせ長生きするんだったら、社会の役に立って周りの人も幸せにして、自分自身も楽しみながら過ごしたい」とよくお聞きします。そのためには、脳が健康な状態でなるべく衰えないようにするために、脳を鍛える「脳トレ」が必要です。

 シニアの人に限らず、脳が健康であることはすべての年代において重要。私も、「長生きしたいとか、〇歳まで生きるために貯金をしておこう」などと考えますけど、体と脳の健康があってこそ。いくら体が健康でも、脳が健康でないと、自分の描いていた未来は叶えられません。そう思う人が多いからこそ、「脳トレ」に注目している人が増えているのです。

――「何歳からでも脳の力は鍛えられる」というメッセージに勇気づけられました。シニアの方が脳のトレーニングをすることで変化があった事例はたくさんありそうですね。

山中:脳トレドリルを試した方からたくさんメッセージをいただいています。言葉がスッと出てこなくなってしまった80代の親御さんが脳トレドリルを試したところ、以前よりも言葉がスムーズに出るようになって、それ以来、自分から楽しんでドリルに取り組むようになったそうです。

 また、家族みんなで脳トレをして、家族間の会話が増えて、使う言葉が少し増えてきたというお話もよく聞きます。

 年齢によって、退化していくものですが、退化するスピードを緩めるための訓練として役立っているようです。

――年齢を重ねてくると、言葉がスムーズに引き出せなくなってくるものでしょうか。

山中:シニアの方々に限らず、私たちも使わない言葉は忘れていきますよね。だから、言葉を使う場面をたくさんつくることが大事なんです。

 語彙力を養うには読書がいいのですが、年齢を重ねると視力が衰えるので、なかなか長時間読むことが難しい。でも、脳トレなら1日1分から始められるので、短い時間で考えたり、思い出したりする作業を繰り返すことができるんです。

――「言葉が出てこなくなる」以外に、どんな不安や課題を感じ、克服しようとしているのでしょうか。

山中物忘れに不安を感じられる人が多いです。「スーパーに来たものの、何を買いにきたか忘れてしまう」「自転車に乗ってきたのに、帰りは歩いて帰ってしまった」など。

 シニア世代の方々は、昔はバリバリと働いてこられた方たちばかり。だからこそ、以前と比べてしまって不安に思うことも多いんですよね。「昔はあんなに仕事ができたのに」「あんなに健康だったのに、今は思うように体が動かない」とよく話されています。

「このまま物忘れが激しくなって、認知症になったらどうしよう」「このまま全てが思うように動かなくなったらどうしたらいいんだろう」という声も聞かれます。

 私と同世代の人と話していても、「親の認知症が始まった」と聞く機会が増えました。老化がつらい・苦しいという気持ちだけでなく、ドリルを通じてでもいいですし、楽しみながら老化のスピードを遅らせることができたらと考えています。

「思い出す」という作業を普段からする

――『1分間瞬読ドリル』を認知症予防に活用できそうですね。

山中:まさに、認知症予防に活用してほしいですね。人や物の名前がとっさに思い出せないのは、「思い出す」という作業を普段していないからなんです。人間の脳は、忘れたことをそのままにしてしまうと老化・退化していくと言われます。

『1分間瞬読ドリル』は、「これは何だったかな?」と、「思い出す」を繰り返す問題があります。ワークのときにすぐ思い出せなくても、終わった後に答えを見て、「ああ、そうだった」と思うことで、思い出す力を鍛えられます。

――脳の引き出しに入っている情報を引っ張り出してくる感じですね。

山中:そうです。使わないでしまったままだと、引き出しもさび付いて開かなくなっちゃいますから。

 あえて刺激することが大事です。

思い出す力を鍛える

――『1分間瞬読ドリル』の中で、特におすすめの問題はありますか?

山中:シニアの方におすすめしたいものが2種類あり、1つ目は「発想力アップ! ストーリー作成問題」です。4つのイラストを見て、イメージをふくらませて文章を作ります。

「あの人の名前、何だっけ?」がなくなる画期的メソッド

 年齢を重ねてくると視野が狭くなりがちなので、今のことだけでなく、前にあったことや後ろに起こることを想像できる点がおすすめする理由です。

 ストーリーを作ろうとすると、自然とイラストに関わる過去の出来事を思い出すことになります。遊園地のイラストなら「孫と遊園地に行ったな」、花火のイラストなら「子どもを連れて、あそこの花火大会に行ったよな」などです。

 記憶力がなくなってきたと感じている人が多いと思うので、こうした記憶を思い起こすことで脳が鍛えられます。そして、連想していくうちに、「元気なうちに、家族で旅行に行きたいな」と先のことをポジティブに考えるようになるのです。

 また、「思考力アップ! 共通点さがし」の問題もいいですね。5個の文章が並んでいて、共通点を探す問題もの。共通点を探すうちに過去の経験や出来事を思い出す効果が期待できます。文字やイラストバージョンもあるので、脳が刺激されます。

「あの人の名前、何だっけ?」がなくなる画期的メソッド

――物忘れが多いと悩んでいる人によさそうですね。『1分間瞬読ドリル』に取り組むタイミングとして、1日の中でいつがおすすめでしょうか?

山中:基本的にはいつでも気軽にやっていただいていいんですが、質問されたときは「朝」と答えています。なぜかというと、睡眠で休んでいた脳が、一番活発なのが朝だと言われているからです。朝はポジティブな気持ちになりやすいですし、一日を元気に楽しく過ごすための大切な時間です。

 朝にウォーキングで体を動かすと1日のやる気や活力が出るのと同じで、朝に少しだけ脳を鍛えることですっきりと目が覚めやすいです。

 とはいえ、どうしても朝が苦手で夜型の人もいるので、朝でなくても問題ありません。朝にやることよりも、毎日続けていくことが大事なんです。だから、ご自分が習慣にしやすいタイミングを選んでみましょう。

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「あの人の名前、何だっけ?」がなくなる画期的メソッド