「子どもたちの能力を最大限に伸ばしたい」という塾の経営者の想いから生まれたのが「瞬読」というメソッドだ。瞬読のスキルを身につけたことで、自分の発言に自信をもち、積極的に物事に取り組む子どもが増えているのだという。瞬読のメソッドをベースに、脳の6つの力「記憶力」「思考力」「判断力」「集中力」「発想力」「読解力」を鍛えられるのが『1分間瞬読ドリル』だ。著者である山中恵美子さんに、瞬読が生まれた経緯、これからの時代に求められる能力について聞いた。(取材・構成/久保佳那 撮影/疋田千里)
基礎知識と語彙力が圧倒的に足りないと、どうなる?
――『1分間瞬読ドリル』は、「右脳でイメージし、左脳で言語化する」を一瞬でやる脳トレですが、そのベースにある「瞬読」は、どのようにして生まれたのでしょうか?
山中恵美子(以下、山中):「瞬読」は、「瞬間の読書」。本を速く読めるようになる技術です。瞬読を始めたきっかけは、学習塾を経営する中で、「子どもたちのために、今の時代に必要な能力を身につけられるようにしたい」と思ったことがきっかけでした。なぜなら、日本の大学受験の制度が大きく変わる過渡期にあったからです。これまでのセンター試験は知識を丸暗記していれば問題が解けましたが、2021年から共通テストに変わり、思考力や判断力、表現力を問うような試験に変わっています。
こうした能力を身につけるうえで、土台となるのは「基礎知識」と「語彙力」です。この2つを身につける近道は「読書」と考えました。朝の読書タイムで1日1冊、本が読めるようになったら、今の時代に必要な力に結びつくだろう。そう思って、瞬読を開発しました。
瞬読は単なる速読ではなく、もともと私たちが持っている記憶力や思考力を伸ばすことによって、本を速く読む方法です。「本を速く読む」ことが目的ではなく、「能力を伸ばす」ことが重要なんです。
親の2大悩みを解決する
――瞬読を教えてから、子どもたちにどんな変化がありましたか?
山中:わかりやすい例では、これまで人前で意見を言わなかった子が、授業中に堂々と手を挙げて人前で発言ができるようになりました。性格が前向きになって積極的になった子も多いです。短時間でインプットできるようになって知識量が増えてくると、自分の考えを人に話したいと思うようになるんです。
子どもに限らず、大人も得意なことは話したいですし、自分の知らない話題になるとつい黙っちゃいますよね?
――気配を消したくなります(笑)。学習塾を経営されていると、親御さんから相談を受ける機会も多いと思います。どんな悩みが多いでしょうか?
山中:「うちの子は読解力がないです」という悩みは多いですね。「読解力」は、相手が何を言いたいかを読み解く力です。本をたくさん読むことで、基礎知識と語彙力が身につき、筆者が何を伝えたいのか、それに対して、自分はどう思うのか、自然と考えるので、同時に読解力も養われます。読解力が養われると、国語の成績アップにもつながります。
『1分間瞬読ドリル』では、「この問題は何を意味しているのかな」と考えたり、想像力を働かせてストーリーを考えたりすることで、読解力を自然に身につけられます。
――他にどんな声がありますか?
山中:「うちの子は自分の意見をもって発言するのが苦手」という声を聞くこともあります。そう言われて、塾の子どもたちを見て気づいたのが、活発で自分の意見を言える子は、勉強ができたり、自分の知識に自信をもっていたりするんです。
成績は悪くてもゲームの話をしたら1時間話し続けたり、サッカーの話が止まらなかったりする子もいます。「ゲーム、サッカーについて詳しい!」という自信があるから発言ができるんですね。
自信をつけるには経験や知識が必要で、自分の思いや考えを伝えられない理由は知識や経験不足だからだと気づきました。考えてみると自然なことですよね。人間は、経験や知識がなければ話せませんから。
つまり、手をあげて発言するのが苦手な子は、知識量が足りていないことが多いんです。そんなときは、たくさんの言葉に触れることが大事。新しい言葉を知ることで知識が増えていきます。
とはいえ、急に能力が上がったり、知識が増えたりするわけではないので、日々の積み重ねが大事です。
ただ、親は子どもの知識量を意外と知らないので、『1分間瞬読ドリル』に一緒に取り組むのがおすすめです。同じ問題を一緒に解くことで、「こんなことも知っているの?」という気付きがあると思います。
「知識」が増えれば「積極的」に行動する
――瞬読の力を身につけたお子さんは最強ですね。
山中:瞬読を始めたことで、「いろんな勉強をしたい」「広い世界を見たい」と思うようになり、中高一貫校なのに、学校を辞めてカナダに留学した生徒がいます。
「そんな子じゃなかったのに、『自分から留学したい』と言ってきた」と、親御さんが一番びっくりしていましたね。こんなふうに、知識が増えたことで選択肢が広がり、積極的に行動する子もいます。
また、短時間で「集中力」を一気に高められるようになった結果、ゾーンに入るような感じで勉強以外のスポーツにも集中できるようになったんです。
『1分間瞬読ドリル』は、集中力を高める効果があります。勉強する前や本を読む前に、ドリルを解いて集中モードに入ると、そのあとも集中して取り組めてスムーズに物事が進んでいきます。
ドリルは必ずしも最初のページからやる必要はなく、パラパラとめくって、どのページからもできるようになっています。難易度の高い問題ではないので、ゲーム感覚で楽しみながら集中力を高められます。
――お子さんでも取り組みやすそうですね。『1分間瞬読ドリル』で、特にお子さんにおすすめの問題はありますか?
山中:「判断力アップ! バラバラ問題」です。バラバラになった文字を並べ替えて、単語をつくっていきます。こういう謎解きのようなドリルが好きな子は多いですね。一瞬で集中力を高めたり、頭の中で変換したりする作業ができるので、1分やるだけで深い集中に入れます。
――なんだか、クイズ番組で出てきそうです。
山中:テレビで取り上げられるときにも、バラバラ問題を使いたいとよく言われるので、子どもだけでなく大人も楽しめます。親子で一緒に取り組んで、スピードを競っても面白いですね。
小学校1年生から親世代、おじいちゃんおばあちゃんまで、コミュニケーションをとりながら、取り組んでいただけたらうれしいです。