「辞められ方」と「辞め方」を変える「辞め方改革」
もちろん、人的資本という言葉が再び注目を浴びるまでは、企業が自社の人材を「投資対象の資本」として見ていなかったというわけではありません。ただし、人的資本に関する情報開示が求められることによって、人への投資の意識が高まったり、企業が投資家や取引先や候補者などに対して積極的に自社の人事戦略や人事に関する情報を発信するようになったりすることは良いことではないでしょうか。情報開示に関するガイドラインが存在することによって、投資家や取引先や候補者にとっては他社比較が可能な情報が分かるようになります。また、このような潮流は、企業が自社のマテリアリティ(重要課題)を解決する取り組みとして独自の人材投資戦略を磨き上げることを後押しすることになると考えられ、企業にとっても、そこで働く個人にとっても大きなメリットがあると言えます。
筆者が経営する会社では、アルムナイ専用のクラウドシステム『Official-Alumni.com(オフィシャル・アルムナイ・ドットコム)* 』の提供を行い、企業と退職したアルムナイとの関係構築を支援しています。そして、事業を通じて、企業の「辞められ方」や従業員の「辞め方」を変える「辞め方改革」を提唱しています。人的資本を考える時に、これまでは、在籍する社員を中心に考えることが一般的でしたが、退職したアルムナイにも目を向ける企業が増えてきています。辞めた後の関係性が変わることで、企業はアルムナイを「拡張した組織」の一部として捉え、アルムナイと一緒に企業価値を高めることができ、アルムナイは企業の「拡張した組織」の一部として自分の価値を発揮する場所を増やすことができる――こうしたWin-Winの関係になります。
* Official-Alumni.comは、ハッカズークが提供するアルムナイ専用クラウドシステム。企業が効率よく運用できる管理機能に加えて、登録するアルムナイのメリットとなるアルムナイ同士のチャットや名簿検索、さまざまな募集ができる機能などが簡単に利用できるツールになっている。