大人は「速い1年」「遅い1年」
結局どっちがいいのか

 子どもの頃は1年をとても長く感じたという人は多いだろう。まだ生きている年数が少ない子どもは、相対的に1年を長く感じるといわれる。しかし、もしも情報量の摂取と時間の感覚が連動しているのであれば、スマホやゲーム、SNSから絶え間なく情報を摂取している現代の子どもたちは、昔の子どもよりも1年を短く感じているのかもしれない。しかし、この感覚を実際に調査するのはなかなか困難なのだろう。

 ところで、「Z世代、一昔は5〜6年前」という見出しを見て、昨今話題になる動画のファスト視聴(映画や動画を倍速再生で見ること)などを連想して「若者の時間感覚はスピーディーで現代的」と思った人もいるのではないか。

 しかし、よく考えてみると、今のような年末の時期に社会人たちからは「ああ、もう1年が終わるなんて」「なんて早いんだ!」と嘆きに似た驚きの声をよく聞く。中には「まだあれもこれもやっていないのに、もう1年が終わってしまうなんて」という、公私の目標が未達成なのであろう声も混じる。

「今年はなんだか1年が長く感じたなあ」という感慨は、過ごした時間に対して充足・充実とともに味わっている人もいるだろう。そう考えてみると、一昔を5年と感じる方が10年の人よりもクールなのか否かというのは、一概には言えないだろう。

 Z世代の動向をいちいち気にしてしまう筆者のようなタイプは、「Z世代は」と言われると、ついつい中高年も時代についていくために彼らの感覚から学ばなければならないと思ってしまうが、時間感覚の良しあしぐらいは流れてくるニュースに惑わされず自分で決めようと思った次第である。