仕事に追われてあっという間に1日が終わり、1週間、1ヵ月、1年とどんどん時間が過ぎていく。けれども暇さえあればSNSやYouTubeを見てばかりで、脳疲労やストレスがなくならない。そんな毎日の繰り返しでいつか後悔するかもしれない生活をリセットするための処方箋が発売された。会社員時代に音楽プロデューサーとしてミリオンセラーを10回記録したあと39歳で退職してすべてリセットし、ニュージーランドに移住した四角大輔さんの新刊『超ミニマル主義』だ。
独立後の2012年に上梓してベストセラーになったデビュー作『自由であり続けるために20代で捨てるべき50のこと』から10年目。移住後も世界を旅しながら事業運営、メディア連載、プロデュース業などに携わってきた四角さんが再びライフスタイルをリセットし、超シンプルで楽な働き方を実現するためのノウハウを詰め込んだ内容となっている。「最小限=ミニマル」を極めて、自分の可能性の「最大限=マックス」を引き出す。「超効率化×超集中」で成果を出し続けながら、自由で豊かな人生を手に入れる。そのために不要なモノ・コト・情報をすべて手放すライフハック術をまとめた本書から、今回は、圧倒的な成果を出す仕事術について四角さんに語ってもらった。(構成/樺山美夏 撮影/疋田千里)

【最も“非生産的”な働き方は何?】仕事を軽くして圧倒的な成果を出すたった1つの方法

もっとも無駄が多いマルチタスクをやめる

――現在はニュージーランドで自給自足ベースの暮らしを営んでいる四角さんですが、20代から大手レコード会社に勤め、30歳からの10年間は、プロデューサーとして10回もミリオンセラーを記録されたそうですね。仕事の無駄を削ぎ落として成果を出してきたと本書で述べています。もっとも無駄だったのは何でしょうか?

四角大輔(以下、四角) 複数の仕事を同時並行的に進めるマルチタスクの働き方ですね。僕はもともと1つのことしかできない不器用な人間なので、まず自分が心から愛せるアーティスト1組だけ担当させてもらうよう交渉しました。当時は、プロデューサー1人につき3~4組のアーティストを担当するのが当たり前で、最高6組まで担当させられたこともあったのですが、まったく結果をだせずで。

――例外的に認めてもらえたのはなぜですか? 上司に気に入られてたとか?

四角 いえいえ、実績ゼロの僕は部内での風当たりも強かった。売れる前の平井堅を担当したときは、CDが3000枚くらいしか売れなくて担当を外されましたから。彼の魅力を伝えるプレゼンスキルもメディアの人脈も、社内を巻き込む力もなかったんですよね。他にも、自分がいいと思ったロックバンドやテクノ系の女性ボーカリストも同時に担当しましたけど、「四角が手がけるアーティストはカッコいいけど売れないな」と言われていました。

 そのうえ当時は、小学生の頃から苦しんでいていたチック症と赤面症が悪化、笑顔と挨拶の練習をしないと会社にいけないほど辛い日々でした。仕事の優先順位は間違えるし、タスク管理もスケジュールリングも甘いと、いつも怒られていた話は本に書いた通りです。出世コースからも外れ、失うものがなかったので、いつ辞めてもいいと思っていたんですよね。

 でも、ヒットメーカーの先輩のアシスタントをさせてもらった経験で学んだ、大きな成果を生む「一点突破」の方法論を思い出し、どうせ辞めるならその前に、やりたい仕事だけに「一点集中」しようと覚悟してみたんです。ただし1年間の期間限定で、ダメだったら給料もボーナスもカットしてもらっていい、左遷もクビも受け入れると上司に直訴したんですね。そしたら希望が通り、男性デュオのCHEMISTRYだけにフォーカスすることに。ミリオンヒットを出せるようになったのはそこからなんです。