過去に監禁被害
無事に発見されたが

 近所を散歩したり公園でボーッと座ってたりしているうちは、顔見知りの人たちが連絡をくれたり、家まで送ってくれたりしていたそうですが、徒歩とはいえだんだんと行動範囲が広がった結果、数年前に山本さんが恐れていたことが起こったのです。

 自宅から2駅ほど離れた公園のベンチに座っていた麻美さんは、大介と名乗る男性に声を掛けられ、そのまま大介の一人暮らしの家までついていってしまったのです。そしてそのまま数日間監禁されてしまいました。

 麻美さんは「もし部屋から一歩でも出たら殺すぞ!」と脅され、「部屋のドアは開けられないように鎖でロックするからな!」と、どうしようもできない状況だと信じ込まされたのだそうです。実際にはドアノブをひねれば簡単に開くはずのドアだったのですが、あまりにも素直な麻美さんは、大介が出かけている間は、空腹もトイレも我慢してベッドの上で体育座りをしてじっと動きませんでした。少しでも動いたことがバレたら怒られるという恐怖に縛られていたのです。帰ってきた大介は自分の気持ちのまま麻美さんをもてあそびました。麻美さんに拒否する自由はありませんでした。

 1週間ほどたって、大介が出かけている間にどうしてもトイレが我慢できなくなった麻美さんは、「おしっこー、おしっこー」と叫びました。が、誰も答えるはずもありません。我慢の限界を迎えて、ドアノブに手を掛けたところ、簡単にドアは開きました。麻美さんは急いでトイレに駆け込み用を足した後、急いで部屋に戻りました。この部屋から逃げ出すことはみじんも考えていませんでした。程なく帰宅した大介は麻美さんが部屋から出たことには全く気づいておらず、いつもの流れで麻美さんに覆いかぶさりました。

 麻美さんがそんな状況にあるとは全く知らない母親の山本さんは、「電波の届かない場所にあるか、電源が入っていないためかかりません」というアナウンスを告げる麻美さんのスマホに度々電話をかけつつ、徒歩での行動範囲を想定して毎日早朝から夜中まで捜し続けていました。当然警察にも相談はしましたが、これまでに何度も家出を繰り返しては、不特定多数の公園で見つかる麻美さんについては、事件性がないと決めてかかっているようで、ほとんど捜索らしい捜索はしてくれませんでした。