しかし山本さんにとっては、家出する度に脱水症状で発見される麻美さんが、今回も無事で見つかるという保証はどこにもありませんでした。麻美さんの素直さは、公園の水でさえ勝手に飲んだら怒られるのではないか?と考えてしまうほどなのです。山本さんが、麻美さんに何度も公園の水道の水は飲んでも良いことを言い聞かせたので、麻美さんは次第に飲めるようになったそうです。

 山本さんは、これまで麻美さんが家出しても、長くても3日程度で見つけ出してきました。ところがそのときは、もう8日目になろうとしていました。「もう死んでいるのでは……」という不安が頭を何度もよぎりましたが、なんとか頭から振り払いながら捜し続けていました。

 麻美さんが大介に監禁されて10日目、極度におなかがすいた麻美さんは、大介の帰りが遅かったこともあって、我慢しきれずに裸足のまま部屋から出て、「おなかすいたー」と言いながら付近をウロウロしているところを、近隣住人に保護され、警察に届けられました。その日中に山本さんに連絡が入り、無事に麻美さんを連れ戻すことができたのです。

監禁男と「けっこんする」という女性
裁判の結果は

 しかしそれだけでは終わらず、その数日後、大介は山本さん宅に押しかけてきました。「麻美を返せー!」と叫び続けたので、山本さんは通報しました。警察に連行され麻美さんに対して行ったことを全て自供したため、大介には、裁判所から執行猶予付きの判決と接見禁止命令が出されるにとどまりました。

 山本さんは、初犯とはいえ未成年に対する強姦罪で実刑判決が出るだろうと思っていました。しかし、いざ裁判が始まると、麻美さんは「だいすけはけっこんするあいて」だと頑強に証言し続けたのです。麻美さんは監禁中に大介から結婚しようと吹き込まれていたため、それを素直に受け取ってしまっていたようでした。相手がやり手の弁護士であったこともあり、悪質性は軽減し情状酌量が認められたため、懲役2年6カ月、執行猶予が4年という判決が下ったのです。

 2017(平成29)年の改正以降の強制性交等罪は「5年以上の有期懲役」なので初犯でも実刑になるのですが、当時の強姦罪は「3年以上の有期懲役」だったため、情状酌量により執行猶予が付くことがあったのです。