80歳から贈与だと余命9年中7年に相続税
改正前の「駆け込み贈与」節税ラストイヤー
財務省の資料によれば、生前贈与した贈与者の年齢は70代でピークを迎え、80代も高い水準で続く。その半分以上が子供への生前贈与である(下図参照)。
厚生労働省の21年簡易生命表によれば、80歳の日本人の平均余命は男性が約9年、女性が約12年だ。仮に80歳から毎年生前贈与を始めて平均余命まで生きた場合、相続7年前までの贈与にも相続税を課す新ルールでは男性は2年分、女性は5年分の生前贈与しか節税につながらない。
実際、生前贈与を使った節税術の利用者は富裕層ほど高まっていく。遺産総額10億円超の場合は約4割で生前贈与の相続財産への加算が発生しており、加算額の中央値は1010万円だ(下図参照)。
遺産10億円超の層が毎年同額を生前贈与していたと仮定すると、改正で7年に延長された相続財産に加算される生前贈与に対して、約685万円の相続税がかかるのだ。
生前贈与の節税術を封じる「新ルール」の開始は24年1月1日に決まった。つまり、改正前の23年は「駆け込み贈与」で節税できるラストチャンスだ。
今回の改正では、教育資金贈与の延長や、タワマン節税に対する増税の「予告」など、相続と贈与の重要事項がめじろ押しだ。改正「対象外」でまだまだ活用できる対策もある。