中島孝徳・ダイドードリンコ社長Photo by Masato Kato

2012年から9年連続で縮小する自動販売機市場。それでも、飲料業界6位のダイドードリンコは、自販機事業で同3位のアサヒ飲料と提携するなど経営資源を投入し、アクセルを踏み込む。市場が縮小する自販機事業に投資する“逆張り戦略”の勝算はあるのか。ダイドードリンコの中島孝徳社長を直撃した。(聞き手/ダイヤモンド編集部 山本興陽)

自販機で先行値上げ、数量3%減にとどまる
価格志向の顧客は自販機市場から「離脱」

――2022年10月から自販機の商品を値上げしました。

 値上げ実施前と比べて、売り上げはプラマイゼロです。販売数量は、3%程度の減少でしょうか。14年の消費増税時に自販機で10円の値上げを行った際、売り上げがガクッと落ちたことを踏まえれば、ポジティブな状況です。

 ビールメーカー系の飲料メーカーと比較すると、コカ・コーラ系とわれわれの値上げが先行している状況ですが、値上げへの社会的な受容性を感じています。

 また、仮説として言えるのは、自販機市場に価格志向の顧客は残っていないということです。

 現在の自動販売機のコアな顧客は30~40代の男性で、比較的可処分所得に余裕があり、価格よりも利便性を優先している。価格を優先する顧客は、既に自販機市場から離れドラッグストアなどへ流れているのではないでしょうか。

――12年から9年連続で自販機市場は縮小しています。アサヒ飲料と業務提携するなど注力していますが、提携する販売会社は低収益で、明るいビジョンが見えません。ダイドーの自販機市場での勝ち筋はあるのですか(提携交渉の経緯や詳細:https://diamond.jp/articles/-/310370参照)。

自販機市場が縮小していても、「利益はしっかり確保できる」と強調した中島社長。次ページでは、ダイドーの自販機市場での勝ち筋や、アサヒとの提携交渉で「譲れなかった点」を中島社長に語ってもらった。また、コンビニやスーパーなど、流通チャネルの決定的な“弱点”も明かした。