2023年4月、経済同友会の代表理事にサントリーホールディングス(HD)の新浪剛史社長が就任することが内定した。かねて新浪社長は過度な円安に警鐘を鳴らし、元凶は日本経済の「新陳代謝の低下」にあると断じてきた財界のご意見番だ。引き続き23年も原材料高・資源高というハードルに直面する企業経営者はそのような方策を採るべきなのか。特集『総予測2023』の本稿では、サントリーHDの事例を交えつつ、資源・原材料高を封じる「2つの打開策」を明かした。(聞き手/ダイヤモンド編集部 山本興陽)
円安は日本の新陳代謝低下
「規制緩和」推進で、財政頼みの経済脱却
――日本銀行が金融緩和策を修正したことで一転、円高傾向に振れていますが、新浪社長はかねて「円安の議論をすべし」と警鐘を鳴らしてきました。
円安は、日米金利差だけが原因ではありません。日本経済の底力の低下、ひいては生産性の低下が問題で、そこを解決しなければなりません。日本の生産性が低下し続けている要因は、「新陳代謝」が起きていないからです。
新陳代謝で大事なことは、新産業の創出。しかし、日本では新しい企業があまり出てきていません。新産業が生まれ、古い産業や企業が消えていくという、当たり前の経済のダイナミズムが起きていない。
国と民間企業の間の「ビジネスサイクルの転換」が必要でしょう。新型コロナウイルスの感染が拡大する前から、日本は「財政に頼った経済」でした。景気が悪くなると、すぐ補正予算を組む。その結果、国は借金を雪だるま式に増やし、経済を回してきました。
民間企業にお金はある。現在、300兆円(総額ベース)もの現預金を持っていますが、これらを有効活用できる仕組みを整えることです。国は、予算を付けたら終わりでどのように使われたか見ていない。一方、民間はもうけようとしますし、使われ方も厳しく見ますので、同じ300兆円でも、国と比べた際の効果は高いです。
だからこそ、民間企業の投資が行われるように「規制緩和」を行うべきです。特に今は、安全保障の面でも海外から国内回帰が必要なタイミング。政府が新しい産業政策を実行し、民間中心の経済に転換していくべきです。
――原材料高や資源高に、経営者はどう向き合うべきですか。
原材料高・資源高に襲われた22年。引き続き23年もその傾向が続くとみられる中、企業経営者はこの難局にどのように向き合えばよいのか。新浪社長に、サントリーホールディングス(HD)における具体的施策を踏まえつつ「2つの打開策」を明かしてもらった。