企業や家庭に節電を促すために国が主導している節電プログラムが空振りしそうだ。今冬に危惧されていた厳冬が回避される見込みもあり、夏に節電策を導入したものの発動しなかった関西電力のように、本腰を入れない電力会社が相次ぐ恐れがあるのだ。節電に取り組んだ企業や家庭へのポイント付与も本来の趣旨とは外れた運用がなされる可能性があり、制度の「ひずみ」も浮き彫りになりそうだ。(ダイヤモンド編集部 土本匡孝)
ラニーニャ現象終息で
おおむね平年並みの寒さか
電力業界が注目する、気象庁の2023年1~3月の3カ月予報が12月20日に発表された。
電力需給の逼迫(ひっぱく)がとりわけ危惧されていた東日本の気温は、1月「平年並み40%、平年より高い20%」、2月「同30%、同30%」、3月「同30%、同40%」。西日本では、1月「同40%、同20%」、2月「同30%、同30%」、3月「同40%、同30%」との予報になった。
太平洋赤道域の日付変更線付近から南米沿岸にかけて海面水温が平年より低い状態が続く「ラニーニャ現象」が終息に向かい、おおむね平年並みの冬の寒さとなりそうだ。
一般的に冬季は太陽光発電の発電量が下がる一方、暖房の需要で電力使用量が上がる。10年に1度の厳冬になった場合、電力需要に対して供給の余力がどれほどあるかを示す「電力予備率」は最も厳しい東日本の1月で4.1%と予想されていた。
安定供給に最低限必要な予備率は3%とされており、一部の発電所でトラブルが生じれば大規模停電を起こしかねないレベルである。
国はこの電力需給の逼迫に備え、今冬は補助金を活用して電力各社の「節電プログラム」を支援。これを受け、電力会社約700社のうち約300社が各社独自の節電プログラムを展開する。
ただし、冒頭の3カ月予報通りとなれば、10年に1度の厳冬にはならなさそうだ。
もちろん、電力危機が回避できそうなことについては朗報だが、新たな問題も出てくる。一つが、電力会社が節電に本腰を入れなくなってしまう点である。
また、節電プログラムが抱える制度上の「ひずみ」も露呈しそうだ。特に、家庭向けの節電プログラムは節電してもメリットが得られない“絵に描いた餅”になり、逆に節電に取り組まなくてもポイントを得られてしまうとった事態も起きかねないのだ。
次ページでは、夏に節電プログラムを導入したものの結局発動しなかった関西電力の事例を紹介し、電力会社の「無気力」ぶりとひずんだ制度の実態も明らかにしていく。