電力業界では2024年度から電力会社の経営に大きな影響を与えかねない新制度がスタートする。それを見据え、ソニーからカーブアウトしたシステムベンダー、インフォメティスと老舗の新電力大手イーレックスがタッグを組み、企業や家庭に節電を促す節電プログラムの進化を狙っている。特集『新電力 節電地獄』(全11回)の#10では、今冬の節電プログラムよりも大きな収支改善が見込める「節電策2.0」の正体に迫る。(ダイヤモンド編集部 土本匡孝)
疲労困憊の電力業界に迫る
再度の試練「容量市場拠出金」
燃料価格高騰と電力需給逼迫に伴う経営危機、今冬の国の節電プログラム、さらには2023年からの政府の電気代負担軽減策への対応――。
22年、電力会社は経営規模の大小にかかわらず、師走までドタバタの1年を送ってきた。
そして23年も液化天然ガス(LNG)スポット市場価格のさらなる高騰が予想されるほか、原子力発電所の再稼働が遅れる懸念もあり、心配事は山積みだ。
ただ、視座が高い一部の電力会社はその先の経営課題を見据えて動きだしている。
電力会社にとって大きなインパクトを与えかねない、24年度から支払いが始まる「容量拠出金」だ。
簡単に説明すると、将来の日本全体の「発電能力」(電力供給力、キロワット)を確保するため、電力広域的運営推進機関(広域機関)を市場管理者とする「容量市場」が誕生した。
容量市場の創設は、採算が取れなくなった発電事業を持つ電力会社に発電設備の維持費などを適切に回収してもらうほか、小売り事業を手掛ける電力会社に電力を安定供給してもらう狙いがある。市場では、将来のある時点での「供給力」の価値が取引される。
この容量市場においては、小売り事業を手掛ける電力会社は容量拠出金と呼ばれる費用を支払わなければならず、その金銭は広域機関を通して発電所に回される。
各電力会社の容量拠出金の額はおおむね、前年度の各社のピーク需要を基準に決められる。大手の新電力で数十億円にも上るとみられ、低空飛行が続く新電力の経営状況からすれば一気に最終赤字へ突き落とされる巨大なインパクトだ。最終的に各社は家庭や企業といった電力使用者へ価格転嫁する恐れが強い。
その基準となるピーク需要の算定が23年度から始まるのを見越し、対策に動きだした会社がある。
ソニー(現ソニーグループ)からカーブアウトしたシステムベンダー、インフォメティスと老舗かつ新電力8位(22年6月時点)のイーレックスグループだ。
両社はタッグを組み、この冬に業界各社で実施されている節電プログラムの“進化系”、いわば「節電策2.0」に23年夏から挑む。次ページでは、数億円もの拠出金の負担減が期待できるという節電策2.0の正体を明らかにする。