新電力 節電地獄#2Photo:Bloomberg/gettyimages

新電力最大手の一角、ENEOSが国の節電プログラムへの不参加を表明したことに業界がざわついている。新電力拡大の旗を振ってきたENEOSホールディングスの杉森務前会長が今夏に不祥事で辞任したことで、石油元売り「脱皮」路線はどうなるのか。特集『新電力 節電地獄』(全11回)の#2では、ENEOSが参加見送りを決めた理由を探った。(ダイヤモンド編集部 土本匡孝)

新電力低圧トップ5で
ENEOSは唯一の不参加

「国の節電プログラムの詳細発表から開始時期までの準備期間があまりにも短かったため、本音では様子見したかった。だけど資源エネルギー庁からのプレッシャーを感じてしまって……」

 新電力中堅のある関係者はこう吐露する。

 家庭や法人にポイントなどを付与して節電を促す国の節電プログラムが今冬始まった。あまり乗り気ではなくても節電プログラムを実施する冒頭のような新電力がいる一方で、12月1日時点で、新電力約400社の「参加見送り」が判明している。新電力全約700社の約6割に当たり、多くは電力販売量下位の資本力の乏しい新電力だ。

 ただ販売量上位100社(今年6月分販売量データ)に入った、比較的体力がある新電力でも、不参加を決めた企業は約15社存在する。次ページで15社の実名を公開するとともに、一部企業の不参加理由も紹介する。

 実は、その中に驚くようなビッグネームも含まれている。特に電力業界で話題になっているのが、新電力3位のENEOSである。主に家庭用を意味する低圧区分(6月分販売量データ)でもトップ5に入るにもかかわらず、不参加を決めたからだ。

 ある業界関係者はこう首をかしげる。「大手の見送りは国全体の節電効果への影響が大きいため、資源エネルギー庁が説得していたようだが……」。

 親会社のENEOSホールディングスといえば、8月に会長兼グループCEO(最高経営責任者)の杉森務氏が「一身上の都合」で電撃退任。後にセクハラによる引責辞任だったと判明するという、広報対応も含めて何ともばつの悪い“事件”があったばかりだ。

 エネルギー業界には規制官庁の経済産業省や世間を過度なまでに意識して「首を差し出す」「みそぎを済ませる」といった独特の“カルチャー”がある。

 今回の不参加にもそうした背景があると思いきや、複数の業界関係者の見方は異なる。「ENEOSは『不祥事があったから国の補助金を申請しない』というようなキャラじゃない」。

 国が音頭を取り、もはや国策ともいえる節電プログラムに、新電力大手のENEOSがなぜ参加を見送ったのか。ENEOSは不祥事で退任した杉森氏の下、電力事業の拡大路線を推し進めてきた。次ページでは、ENEOSの不参加の理由がこの拡大路線にあった可能性を指摘するとともに、杉森氏の退任が与える影響なども探る。