冷え、むくみ、生理痛、痛み、だるさ、不妊、難産、出産後や更年期の不調。『すごい自力整体』の著者・矢上真理恵さんは、「女性の不調のほとんどは自力整体で解消できる」と語る。「自力整体」とは、人の手を借りずに、「整体施術のプロの技法」を自分におこなえるメソッド
体のゆがみを正しい位置へ戻し、筋肉や関節のコリをリリースして、不調を根本から取り除くワークだ。現在、若い世代から高齢の方まで約1万5000人が実践している。東洋医学をベースにしながら効率的に問題解決するのも人気の秘訣。なぜ「自力整体」はいいのか?(構成/依田則子 撮影/榊智朗)
監修:矢上 裕 矢上予防医学研究所所長、自力整体考案者、鍼灸師・整体治療家

うす暗い部屋で過ごすと、不調が消えるのはなぜ? 整体プロが教える美と健康の習慣

眼を休めると骨盤まわりもリラックスする

――現在、矢上さんの著書『すごい自力整体』は、30~40代の女性も多く読まれていらっしゃるそうですね。

矢上真理恵(以下、矢上):そうですね。仕事・出産・育児が重なる世代は、体の不調も出やすいと思いますので、整体やマッサージに通うかわりに購入してくださっているという印象です。

――前回のインタビューでは、女性はとくに「骨盤まわりの緊張をほぐすこと」が、美と健康の秘訣であると伺いました。

矢上:骨盤まわりの緊張は、体全体の流れを滞らせるため、ゆがみ・血行不良を引き起こし、冷えやむくみ、生理痛、だるさなど、なんとなくの不調につながります。ですから、女性にとって骨盤まわりのリラックスは、とても大切です。

――骨盤まわりの緊張をほぐす方法を教えてくださいますか。

矢上:まず知っておきたのは、東洋医学をベースとする「自力整体」は、たとえば「骨盤まわりだけ」といった、一箇所のみをほぐすやり方ではなく、全体を見ていくんですね。

―「全体を見る」とは、どんなイメージですか。

矢上:私たちの全身には「経絡」という気(生命を活性化する源のようなもの)を流すパイプのような筋道がめぐっています。その考えに基づいて骨盤まわりの緊張をほぐす方法をお話すると、役立つのは「目を休ませること」なんです。目の「経絡」は目の後ろ側から背面、そして、お尻まで通っています。ですから、目を休めると骨盤まわりもリラックスするんですね。反対に、目を使いすぎて疲れていると、経絡を通じて骨盤まわりも緊張するんです。

――不思議ですね。目の疲れが、骨盤まわりに関係するとは驚きました。

矢上:なるべく夜は目を休ませて、骨盤まわりの柔らかさを保つことが大切です。たとえば、寝る前のスマホチェックで目が疲れると、骨盤まわりが血行不良になり、眠りが浅くなったり、むくんだり、女性の場合はつらい生理痛や生理不順が出やすくなります。

――照明の明るさも、少し下げたほうがよいでしょうか。

矢上:そうですね。夜はなるべくうす暗くして、さらに裸眼で過ごすと目の疲労がとれますし、骨盤まわりがリラックスして熟睡できますよ。とくにむくみやすい人は、翌朝顔がすっきりすると思います。この習慣を続けると血行も良くなり、「なんとなくの不調」も、気にならなくなってくるはずです。

 そういえば、日本には昔、「産屋(うぶや)」という生理中や出産直後の女性が過ごす、うす暗い部屋がありましたよね。うす暗がりで過ごして、目を休ませるということは、月経や出産で開ききった骨盤を、ゆっくりと元の状態へ戻す役割もあったのだと思います。

 他にも、ひと昔前の助産院では、出産後に休む病室のテレビはコンセントが抜かれていたそうです。これも、骨盤まわりをリラックスさせるため、目を休める配慮です。

 月経や出産の時に限らず、女性のみなさんすべてに、目を休ませる習慣をおすすめします。

うす暗い部屋で過ごすと、不調が消えるのはなぜ? 整体プロが教える美と健康の習慣矢上真理恵(やがみ・まりえ)
矢上予防医学研究所ディレクター
1984年、兵庫県生まれ。高校卒業後単身渡米、芸術大学プラット・インスティテュートで衣装デザインを学び、ニューヨークにて独立。成功を夢見みて、徹夜は当たり前、寝るのはソファの上といった多忙な生活を続けた結果、心身のバランスをくずし動けなくなる。そのとき、父・矢上裕が考案し1万5000名が実践している「自力整体」を本格的に学び、心身の健康を取り戻し、その魅力を再発見。その後、自力整体ナビゲーターとして、カナダ、ヨーロッパ各地、イスラエルにて、クラスとワークショップを開催。さらに英国の名門セントラル・セント・マーチンズ大学院で「身体」をより体系的に学び、2019年に帰国。現在、国内外の人たちに自力整体を伝えながら、女性のための予防医学をライフワークにしている。 写真/榊智朗

監修者:矢上 裕(やがみ・ゆう)
矢上予防医学研究所所長、自力整体考案者、鍼灸師・整体治療家
1953年、鹿児島県生まれ。関西学院大学在学中の2年生のとき、予防医学の重要性に目覚め、東洋医学を学ぶため大学を中退。鍼灸師・整体治療家として活躍するかたわら、効果の高い施術を自分でできるように研究・改良を重ね「自力整体」を完成。兵庫県西宮市で教室を開講、書籍の出版やメディア出演などで注目され、全国から不調を抱える人々が続々と訪れるようになる。現在約500名の指導者のもと、約1万5000名が学んでいる。著書に『DVDで覚える自力整体』『DVD3分から始める 症状別 はじめての自力整体』(ともに新星出版社)など多数。遠隔地の人のために、オンライン授業と通信教育もおこなう。