本書の要点

(1)試練に向き合うとき、成功は約束されていない一方で、成長は約束されている。考え、悩み、汗をかき、心身をいじめ抜いた経験は、必ずその人を成長させてくれる。
(2)失敗したときは、「WHY」を追求するのではなく、早い段階で「HOW」の思考に切り替える必要がある。
(3)人生を「シーン」と「ストーリー」の2つの視点で捉えると、目の前のつらい経験を乗り越えやすくなる。「ありたい未来の自分」をパズルに見立てて、それを実現するためのピースをそろえよう。

要約本文

◆4度目のワールドカップへの挑戦
◇3度目のワールドカップにて

 緑と、赤と、青。目の前の光景が、ピントのずれた写真のようにぼやけて、止まって見えた。

 少し経って、止まっていた景色が動き出す。緑のピッチの上で、赤いユニフォームを着たベルギー代表選手たちが抱き合って喜んでいる。青いユニフォームのチームメイトたちはじっとしたままだ。観客席からは地鳴りのような大歓声が聞こえている。

 まだ走れるし、コンディションも問題ない。でも、電光掲示板によると、それはもう叶わないようだ。2018年7月2日、僕の3度目のワールドカップが終わりを告げた。

◇「もう一度、この舞台に戻ってきてやる」

 2014年のブラジル大会で、僕はこれまでのサッカー人生で一番の挫折を味わった。立ち直るのに1年以上かかったほどだ。

 だから2018年のロシアワールドカップでは、何がなんでも結果を出す必要があった。ワールドカップで味わった挫折はワールドカップでしか取り戻せない。この大会を最後に代表を引退すると決めてもいた。

 それなのに負けてしまった。試合後、ロッカールームへ向かいながら考えていたのは、「もう一度、この舞台に戻ってきてやる」ということだ。盟友・本田圭佑や、ワールドカップ3大会でキャプテンを務めたハセさん(長谷部誠)、同じサイドバックの(酒井)高徳は、試合後のインタビューで代表引退を発表したらしい。そんな中、僕の心はまったく逆の方向へと舵を切っていた。