人は失敗すると「WHY」(なぜ)ばかりを追求してしまう。もちろんそれは大事な作業だが、「WHY」ばかりだと前へ進めない。どこかでスイッチを「HOW」に切り替える必要がある。

 イタリアにいる頃は、車に乗ることが僕のスイッチだった。ハンドルを握り、アクセルを踏みながら、「HOW」を考えることにシフトする。どうすればあのミスを防げるか。今後どのように取り組めばいいのか――。そうしたことを考える時間だった。

 ときには厳しい批判を受けることもあるが、真摯に受け止めて、エネルギーに変える。日本代表で「長友不要論」が話題になっていたときも、僕はあえて批判コメントを見て、自分の財産にしていた。

 批判やミスの中に、成長のチャンスがある。それは僕の信念だ。

◇不安とプレッシャーに立ち向かう

 2022年6月、ブラジル代表との親善試合に先発出場した。前日、試合のスターティングメンバーに選出されたと知ったときは、安堵だけでなく不安とプレッシャーが胸の奥からせりあがってくるのを感じた。

 ヴィニシウス(・ジュニオール)とやれるのかという不安だ。ヴィニシウスはレアル・マドリードに所属する22歳のフォワードで、世界のトップオブトップスの中でも圧倒的な選手だ。正直、怖い。でもこの選手とやれなければ、カタールワールドカップでスペインやドイツとは戦えない。

 そこで僕がしたのは、湧き上がってくる不安と向き合いながら、ヴィニシウスのパターンを把握しようと努めることだった。ホテルの部屋で100回以上、ヴィニシウスのプレー動画を見続けた。

 僕はこの行動を「自分と対話する」と表現している。本当にできる?大丈夫?今どんな感情?そういった「見たくない」ものをあえて見て、受け入れるのだ。これが、重圧と戦い、ネガティブをポジティブに変換するための第一段階になる。この段階を飛ばして「大丈夫だ」「俺はできる」と思い込もうとするのは、恐怖から目を逸らしているだけで、ハリボテのポジティブでしかない。

 僕はヴィニシウスのすごさと自分の感情に向き合ってから、実際に試合で起こるであろうパターンを探し始めた。イメージを膨らませながら、その対応策をインプットしていく。すると少しずつ、自分がやるべきことが見えてきた。