結果として、試合には負けてしまった。でも、重圧から逃げることなく健闘できたのは大きな成果だ。

◇重圧をエネルギーに変える

 ブラジル戦を振り返ると、ユニフォームにそでを通した瞬間、ネガティブな感情はゼロになっていた。不安がエネルギーとなり、自信がみなぎっていたのだ。その感覚にまで自分を持ってこられれば怖いものはない。

 僕はさまざまな節目で、その感覚を持ってピッチに立つことができた。そこには必ず、大きな重圧に支配される、不安な時間があった。その重圧に向き合ったからこそ、不安をエネルギーに変えることができたのだ。

 36歳になってもワールドカップを目指せる立ち位置にいて、ぜひ出たいと思えるのは、重圧を乗り越えて人生が変わった瞬間を知っているからだろう。僕はこうした感覚を、多くの人に届けたい。つらいときこそチャンスであり、不安をエネルギーに変えられれば爆発的な成長を遂げられるのだ、と。

【必読ポイント!】
◆人生をデザインする「ヒーロー思考」
◇「シーン」と「ストーリー」で人生を捉える

 カタールワールドカップに向けた日々を振り返ると、僕は常に重圧や批判と戦っていた。それを助けてくれたのはいつも「成長を願う心」だった。

 ただ、いくら成長を願っていても、どうしようもないときはある。僕はそういうときのために、常に「シーン」と「ストーリー」という2つの視点を持つことを心掛けている。

「シーン」とは、目の前に起きていること。苦しいことそのものと言っていい。シーンを積み重ねたものが「ストーリー」だ。

 歳を重ねるにつれ、自分の頭の中でストーリーを描く力がどんどん上達していった。「こういうことが起きれば、こうなるな」と、自然と見えてくるのだ。

 だから目の前の不安や批判も、「こうすれば好転する」「ああやってしまえば悪化する」といったように、長い時間軸で考える習慣がついた。その考え方は、僕に前進する勇気をくれた。