40代50代だけではなく、20代も介護職を希望する
業種全体における5年前・10年前との数字比較では、派遣登録者の数は増えているものの、「介護業界は必ずしもそうではない」と平井さんは解説する。
平井 ネットの記事やSNS、メディアでの報道を含め、世間一般での介護職のイメージはネガティブなものが多く、介護の仕事があまり望まれない理由には、そうした影響もあると思います。また、当社には派遣スタッフの方から就労相談を受ける窓口があるのですが、実際、介護職に就いていらっしゃる方の相談件数は多いです。内容は、職場環境や給与面のことなどさまざまで、給与について言えば、介護施設の直接雇用では各都道府県の最低賃金の場合もあるようです。
介護職は、声・表情・態度に表れる感情をコントロールして行う職務――いわゆる「感情労働」だ。それゆえ、プロフェッショナルな人材として働き、仕事にプライドを持つ人も多いだろう。ネガティブなイメージの半面、介護業界の就労にまつわる“ポジティブ”なことを平井さんに尋ねた。
平井 介護職に就いている方の退職理由として、「スキルアップしたいから」というものが上位にあります。そうした方々は、仕事へのやりがいや社会貢献の気持ちが満たされる職場を望んでおり、「介護」という仕事に対しての誇りや前向きな思いがあります。また、高齢化社会のなかで、介護職に可能性を見いだしている方が増えていることもたしかです。40代50代になって、ご自分の周りに高齢者が目立つようになり、介護職を身近に感じて仕事の扉を叩くのです。
介護業界で働く人の高齢化がデータに表れている*2 。しかし一方で、「20代の就労も増えてきている」と平井さんは言葉を続ける。
*2 「2021年度(令和3年度)介護労働実態調査」によれば、7割弱の事業所が65歳以上の労働者を雇用している。
平井 コロナの影響で観光業の勤め先を辞めざるを得なかった20代のある男性は、ゆくゆくは介護施設で正社員として働くことを望み、派遣登録されました。資格も持っていないし、業界のことがわからないので、まずは「お試し的」に働いてみたいという意思でした。つまり、人材派遣会社をご自分のキャリアのステップとして活用したのです。週3日の勤務からスタートし、空いている時間は資格取得の勉強をしながら、お仕事を続けています。この方のように、派遣を準備期間として捉える“お試し的な派遣登録”から介護職に就く20代の方も増えています。「派遣」という非正規雇用のスタイルに良い印象を持たない40代以上の方もいらっしゃいますが、昨今の若い方のなかには、人材派遣を就職や転職のステップや新たなキャリアの入り口として活用されている方もいます。