高齢化が進む日本において、介護業界の人手不足が深刻な問題になっている。離職率の高さに加え、新型コロナウイルス感染症の影響で、働きたくても働けない求職者も多いようだ。職場環境、賃金、人材育成……業界や介護施設が抱える課題に向き合いながら、いま、介護業界で働く人たちをどう増やしていけばよいのか。「介護未経験・資格なし」の人材の就労と定着を進める、派遣業界大手のスタッフサービスグループ/スタッフサービス・メディカルの平井真さん(株式会社スタッフサービス・ホールディングス 執行役員)に話を聞いた。(ダイヤモンド・セレクト「オリイジン」編集部)
人手不足の介護業界のなかで、派遣就労者は…
公益財団法人 介護労働安定センターによる「2021年度(令和3年度)介護労働実態調査」によれば、介護事業所全体の「人材不足感」は、前年度を上回る数字*1 となっている。“介護業界の人手不足”が人口に膾炙(かいしゃ)して久しいが、特に、2020年初頭からのコロナ禍ではどのような状況だろう。
*1 事業所における人材不足感について、「大いに不足」「不足」「やや不足」と回答した合計。
平井 介護施設内で、職員や利用者と対面で接することのリスクから、派遣登録する方の数が新型コロナウイルス感染症の拡大に合わせて減る傾向にあります。また、施設側からは、「人手不足だけど、感染の波が落ち着くまでは人材を受け入れられない」といった声を聞きます。そもそも、介護従事者の離職率が高いうえ、欠員補充できず、慢性的な人手不足感はコロナ禍以前から変わっていない状況です。
そうしたなか、医療・介護業界の人材派遣を手掛けるスタッフサービス・メディカル(以下、SSM)は、同社が「フレンド」と呼ぶ派遣就労者と派遣期間を経て社員になった者など、SSMを経由して介護業界で働く人の数を年々増やし続けている。
平井 私たちSSMに派遣登録された方の就労先は介護施設だけではなく、病院などの医療施設もあります。医療施設での看護師、看護助手、医療事務・受付といった職種も含めて、「フレンド」の人数は、介護施設内での仕事に就く方とともに増えています。
一方、お仕事を希望し、派遣登録されている方でも、就労先が決まるまで時間がかかる方もいらっしゃいます。求職側が、週に数日の勤務や1日のうちの短時間労働を希望するなど、多様な働き方を求めている一方、求人側は、経験者や有資格者、フルタイムで勤務できる方を望んでいることがその理由のひとつです。
平井真 (ひらいまこと)
2002年、株式会社スタッフサービスに入社。事務職派遣の営業職、エンジニア派遣のオフィス長を経た後、2013年にユニット長として近畿エリアを統括。2015年4月から株式会社スタッフサービス・ホールディングス執行役員(事務領域事業担当)。2019年4月から執行役員(エンジニア領域事業担当)。2022年4月から執行役員(メディカル領域事業担当)。