職場で困っている人を見かけても、「おせっかいだったらどうしよう…」と躊躇したり、「たぶん大丈夫だろう…!」と自分に言い訳したり……。
気づかいをするときには、つい「心の壁」が現れてしまい、なかなか一歩が踏み出せないことが、あなたにもあるのではないでしょうか?
この連載では、「顧客ロイヤルティ(お客さまとの信頼関係づくり)」をベースに、ビジネスセミナーへの登壇やコミュニケーションスキルの研修講師を通して、全国200社・2万人以上のビジネスパーソンに向けて教えてきた『気づかいの壁』の著者、川原礼子さんが、「気がつくだけの人」で終わらず、「気がきく人」に変われる、とっておきのコツをご紹介します。
「質問はありますか?」の壁
みなさんも経験があると思いますが、ビジネスシーンでストレスを感じる瞬間に、「質問タイム」があると思います。
社歴が長くなってくると、会議や勉強会の運営側につくことも増えてきます。
そういった会の最後に必ず登場するのが、質疑応答です。
私も研修の合間に、「質問はありませんか?」と、何度も呼びかけます。その反応は、会社や部門、年齢層によってさまざまです。
一般的に日本人は、人前で質問することが苦手と言われています。
大学の授業でも、質問するのは留学生ばかりだそうです。私もアメリカに留学した当初、どの授業でも学生たちがつぎつぎと手を挙げる様子に驚きました。
ただ、研修を日々行ないながら感じるのは、質疑応答のときには手を挙げなくても、「隠れ質問希望者」が結構な数いるということです。
研修終了後に、「ちょっといいですか?」と聞きに来る人が毎回います。
どうして人前で質問しないのかと聞けば、
「レベルの低い質問だと思われるかもしれないので……」
「出しゃばりと思われて恥ずかしいから……」
という答えが返ってきます。
たしかに、質問ができないときに自分の心の壁を感じることもあるでしょう。
それなのに、いざ自分が進行役になると、「なんでもいいから質問してほしい」と思ってしまいます。
質問が出てこないとなんとかしなくちゃと焦り、「では、もし後で質問があったらメールをください」と、早々に終了させることも多いでしょう。
でも、せっかくなのだから、うまく質問を引き出したいですよね?
「指名する」より「うまく促す」
そんなときの気づかいが、質問を限定することです。
「では、『今さら聞けないんだけど』ということはありますか?」
「じつはこの後、『ググってみよう』と思っていることはありませんか?」
というように限定すると、参加者は質問がしやすくなります。
1人が質問しはじめると、他の人からも手が挙がるようになります。
「どんなご質問にもお答えしますよ」「遠慮はいりませんよ、いかがですか?」などと、繰り返し呼びかける人を見かけます。
それでも質問が出てこないと、「それでは、〇〇さん、何か質問ありませんか」と無茶ぶりの指名をして、相手の心の壁を乗り越える人がいます。
自分がされて嬉しいことでないならば、やらないことです。
参加者のハードルを下げる限定の質問をすれば、もう手が挙がらなくて慌てることはありません。
会議やちょっとした打ち合わせなどでも試してみましょう。