伝える力――ロジック、レトリック、アナロジー

 自分の意思や考え方を伝えるのに有効な方法には、大きく分けて二種類あります。

 1つ目がロジック(論理)です。論理的に話すことで、理解させ、説得することが可能になります。典型的なのが演繹(えんえき)法と呼ばれるもの。A=B、B=CならばA=Cであるという三段論法は誰もが知っている基本的なロジックです。

 もう1つのロジックの代表が帰納(きのう)法です。事実をいくつか列挙して、その結果として結論を導くやり方です。例えばショウガが風邪に効くという結論を以下のような形で導く場合があります。「風邪を引いたときショウガ湯を飲んだら楽になった。先日テレビでもショウガが風邪に効くとしていたし、東洋医学でも風邪にショウガ湯を勧めている。だからショウガは風邪に効く」。多くの事例を挙げて、一般化するのが帰納法です。ただし、いくら当てはまる事例や事実が多くても全てがそれに該当するかは分かりません。

 その意味でよりロジカルなのは演繹法ということになりますが、私たちが日常の会話の中で使うのは、帰納法が圧倒的に多いでしょう。いずれにしても、ロジックは相手にこちらの考え方を伝え、理解させるのに有用なものだと言えます。

 2つ目にレトリックというのがあります。修辞学とか弁論術と訳され、古代ギリシャの時代にさかのぼります。当時法廷では弁論の優劣によって投票で裁判が行われ、そこで言葉巧みに演説し、聴衆を説得する雄弁家たちが活躍しました。彼らの雄弁術、詭弁(きべん)術がレトリックの起源とされています。