レトリックの代表的な技法「メタファー」とは

佐藤 優 著
また、レトリックの代表的な技法として「メタファー」が挙げられます。これはアナロジーに基づく比喩の一種です。ただし、先ほどのアナロジーの最初の例が「~のような」という、いわゆる「直喩」であるのに対し、「メタファー」は「暗喩」と呼ばれるものです。「神は虎である」「真理は水である」というように、はっとするようなものを並列し結び付けることも多い。直喩にも飛躍がありますが、メタファーはその飛躍がさらに極端になったものと考えていいでしょう。
ロジックとレトリックは学校の勉強で学びますが、アナロジーやメタファーに関しては、しっかりと体系的に学ぶことは少ないでしょう。神学や文学などを専攻した人しか専門的には学ばないものです。
ただし、実際のコミュニケーションにおいて、アナロジーの考え方や比喩表現は大変大きな役割を担っていると言っていいでしょう。人は理論的な説明よりも、時には比喩を用いたたとえ話の方がはるかに理解しやすいことがあります。例えば先ほどお話しした味や香りなどの感覚的な領域の話や、あるいは神など、人間をはるかに超えた存在を説明するには、理屈や理論だけでは表現しきれないからです。