自分を認めてくれる相手に人は心を開く

 もうお気づきだと思いますが、相手の信念の体系を知るということは、相手の内在的論理を知るということとほぼ同じです。相手が何に価値があると考え、何を価値が低いと考えているか? 善悪や好き嫌いの基準はどこにあるか? 人生の目的をどのように設定しているか? 信念の体系とは、つまりは相手の内在的論理にほかなりません。

 信念の体系に働きかけることは、相手を動かすことにも有効ですが、何より相手に好かれるためにも大いに力を発揮します。誰でも自分をよく理解してくれる人をありがたく感じ、大切に思うでしょう。自分の信念、価値観を理解し、それを尊重してくれるわけですから当然のことです。自分を認めてくれる相手に対して、人は心を開き、いろんなことを語りたくなるものです。

 実は意識せずとも、人間関係をつくる上で人は自然にこのことを行っています。恋愛などはその典型的な例でしょう。相手を好きになれば、自然に相手のことを知りたくなります。何が好きなのか? 何を大切にしているのか? どんなことをすると機嫌がよくなり、どんなことをすると怒るのか?

 自然な形で相手の信念の体系(内在的論理)をつかもうと必死で頑張ります。そしてそれに従って、相手が食いついてくるようにデートに誘ったり、自分を好きになってもらおうと、さまざまなアピールをするわけです。

 そう考えると、内在的論理を知り、信念の体系をつかもうとする行為は、相手を好きになることと似ているとも言えます。こう言うとそんな単純なことかと思うかもしれませんが、これは深い真理でもあります。相手が嫌いだと、そもそも相手を深く知りたいとさえ思わないでしょう。

 相手に対して好意を持ち、好意的に解釈ができるからこそ、深く相手を知ることができます。その上で、相手を肯定しながら前向きな話をしたり、提案したり、アドバイスができるわけです。

 好意が相手に伝わるから、相手もその気になり、こちらに対して好意と信頼を覚えてくれるようになります。建設的で前向きな人間関係の循環に入っていくのです。スキルを超えた人間関係の極意が、ここにあるように思います。