次期日本銀行総裁を雨宮正佳副総裁に打診と報道された。2月中には正式な人事案が国会に提示される。次期総裁の下で、13年1月に結ばれた政府・日銀の共同声明が見直される公算は十分にある。金融政策の柔軟化が進み、異次元緩和の修正が進むだろう。しかし、それは金融政策の正常化を意味するものではない。(BNPパリバ証券経済調査本部長チーフエコノミスト 河野龍太郎)
日銀の新体制の下で異次元緩和の
総括検証が行われる
2月6日付日本経済新聞で、次期日本銀行総裁について雨宮正佳副総裁に打診したと報じられた。2月中には、正式に日銀総裁・副総裁の人事案が国会に提示されるとみられる。
人事もさることながら、もう一つ注目されるのは、政府・日銀が2013年1月22日に結んだ共同声明の見直しだ。22年末以降、岸田首相周辺は共同声明の見直しに前向きであると報道されている。
政府が共同声明の見直しに着手するかどうかにかかわらず、日銀では、新体制の下、異次元緩和の総括検証が行われる可能性が高い。
異次元緩和の弊害として「財政規律の弛緩」を日銀が指摘するのは政治的に難しいが、市場機能の劣化や金融機関経営への悪影響、また資源配分や所得分配への影響を検証しなければ、適切な金融政策運営が難しいからである。
もし共同声明が見直されるのなら、主な変更点は、「できるだけ早期に実現する」とされる2%インフレ目標を中長期目標に位置付けることだ。そうなれば、新執行部は、経済の稼働状況やグローバル金融経済の状況に応じ、短期金利や長期金利の誘導目標を柔軟に変更しやすくなる。
22年12月20日の政策修正が、10年国債利回りの許容変動幅の拡大にとどまった理由の一つは、現在の枠組みでは、安定的に2%に達していなければ、政策の方向性を引き締め方向に変更するのが難しいからだろう。
共同声明の見直しが行われるのなら、どのタイミングか、またそのメリット、デメリットはどこになるのか。次ページから検証していく。