日本には四季があります。四季をさらに六つに分けたものが「二十四節気」です。先人たちは二十四の季節を味わい楽しむことで、豊かな暮らしを育んできました。今、このような日本古来の生活様式が再評価されつつあります。季節の流れに合わせて生活し食を摂ることが、心と体の最高の養生法なのです。この二十四の各季節の過ごし方をていねいに紹介し、話題になっている本が『二十四節気に合わせ心と体を美しく整える』です。
同書のなかから今回は「雨水」における養生法を紹介します。「雨水」とは雪や氷が雨や水になる時期のことで、この季節から生命が躍動を始めます。まさに新しい物事をスタートさせるのに絶好の時期なのです。
ここでしっかりと計画を立て、正しい準備を行えば、健やかな未来につながります。その反面、悪いものも表面に現れやすい時期なので、隠れている不調の原因を絶つことも大切です。そうすれば若さと健康を手にすることができるでしょう。
では、今日からすぐに始められる「雨水」の過ごし方──何を心がけ、どのように行動し、何を食べればよいかについてお教えしましょう。
「雨水」の計画は未来につながる
「雨水」はまさに言葉どおり、寒気がゆるみ、降る雪が雨となり、積もった雪が溶けて水になる季節です。現代の暦では2月19日頃にあたります。
江戸時代中頃から、快適な季節が始まる「雨水」に伊勢神宮参りをすることが庶民の間で盛んになりました。
奈良の若草山、京都の大原、山口の秋吉台など春の風物詩として野焼きが有名ですが、これらの行事も雨水に行われます。野焼きをすると焼け跡の灰が草の成長を促し、その草はいずれ馬や牛の良質な飼料となります。このように雨水は未来を見据えて行動すべき時期なのです。
「雨水」の養生は若返りに役立つ
この時期には、新たにビジネスやスポーツを始めたり、あるいはそのための準備や計画を練ることが将来につながります。
暖かくなってくるので、積極的に体も動かしましょう。本格的なスポーツや山登りを始める前の準備期間です。寝転んだまま手足をゆらしたり、首回しや肩回しをするなど、ちょっとした運動から始めればよいのです。
雨水は爪の変化にも注意しましょう。爪に浮き上がるたての模様は老化を示します。爪に表れたシグナルは、春の養生で改善できます。この季節の養生が若返りに役立つのです。ささくれは親不孝を示すなどと言われますが、指先や足先などの体の先端まで手入れを怠ってはいけません。
春の始まりに体調面で注意すべきこと
春は目と関係が深い季節でもあります。特に雨水の時期に目の疲れを感じたら、冬の不養生と精神的な疲れが出始めているサインです。目の周りのマッサージが効果的です。指先でタッピングするように、心地良いくらいの力でたたいてみましょう。目の周りの神経をリラックスさせることが大切です。
また足がつりやすいのも雨水の特徴です。足のつりはミネラル不足や体内バランスの崩れで起きやすいのですが、春の時期には筋のつっぱりが原因で起こります。陽気がよくて体も動くので、つい余計な力が入りがちです。そのために体のこわばりが起こるため、肩こりなどにも注意が必要です。積極的に体を温める時間を設けましょう。朝は東の太陽を向いて、深呼吸しながら、体の筋肉を伸ばしてください。
痛風や胆石を持つ方は痛みが出やすくなります。またアレルギー症状も出やすくなる時期です。雨水はあらゆるものの目覚めの時です。隠れていた症状も表れてきてしまうのです。痛みはその場所に滞りがあることの表れです。
リンパや血液の流れをよくするためには、体操やマッサージが効果的です。脇を伸ばす、腕をひねりながら伸ばす、肩甲骨を寄せたり広げたりするなど、普段運動をしない人も、ストレッチを積極的に生活に採り入れてください。
漢方薬では「半夏厚朴湯(はんげこうぼくとう)」が有効です。気分がふさぐ、咽喉や食道部の異物感、動悸、めまいなどの不安神経症、つわり、せき、しわがれ声、不眠症などに効果があります。最近ではうつの予防や治療に効くとしても注目されています。
「雨水」の時期に心と体を整える食べ物
春キャベツは、誰が食べてもよい食材で、ダイエットや美容にも効果的です。イライラ解消、消化促進、飲酒後の体調管理にも有効です。栄養バランスも優れているので、過食になりがちな食生活の方は、月に1回程度はキャベツをいっぱい煮込んだスープだけを食するのもよいでしょう。
ほうれん草は青色の野菜の代表で、春にピッタリの食材です。温性なので、冷え性の人にオススメです。血の流れをよくするので、肩こりや生理痛の方にもよい食材です。またストレス改善や便秘にも効果的です。シュウ酸が多く独特の苦みがあるので、おひたしもいいですが、ゴマ油炒めなども美味しくいただけます。
いちごは、その酸味が春には必要で、体を美しく引き締めます。気血を調整し血行不良にもよい食材です。
以上を参考にしっかり体を整え、体に良い食事を摂れば、年を経ても美と健康を保てます。
次回は「啓蟄」の時期の心と体の整え方を紹介します。