競争入札方式で周波数帯の事業者を決める「電波オークション」の制度が見送られることになった。新藤義孝総務大臣が関連法案の提出を取りやめることを明らかにしたからだ。
もともとこの制度は、総務省の裁量が働く不透明な比較審査をやめ、国民の財産である電波を有効活用しようというものである。
実は今回の見送りで、事業者が今支払っている「電波利用料」を見直す機会も失われてしまいそうなのだ。
電波利用料とは、国が電波を与える代わりに事業者から集める電波の“賃貸料”のようなもので、その額は年間約700億円にも達している。ここから、電波の監視や技術開発、調査といったマンション管理でいう「共益費」を捻出する。その主な原資は携帯電話1台につき利用者から事実上徴収している年間200円だ。
問題はその使い道。実は、45%が地上デジタル放送への対策に投じられている。2009年度から4カ年で合計約1300億円。11年7月に地デジ移行は完了しているにもかかわらず、事業は続くという。山間地の電波対策や負債返済などに充てるというが、そうした費用を携帯電話の利用者が負担すべきものか疑問符が付く。
来年度予算案では防災無線のデジタル化にも使用するという。A・T・カーニーの吉川尚宏パートナーは「すでに整備した自治体もあり、モラルハザードを引き起こす懸念がある」と指摘する。
今、3年に1度の料金見直しの時期を迎えているが、オークションの見送りで抜本的な見直しはなさそうである。
(「週刊ダイヤモンド」編集部 小島健志)