2012年10月、ソフトバンクが米スプリント・ネクステル社の買収を発表したその日の夜、「ワールド・ビジネス・サテライト」という報道番組に、同社の孫正義社長が出演していた。小谷真生子キャスターからの様々な質問に対して、孫社長が最後に「ドン・キホーテを目指します!」と述べた言葉が印象的であった。

 ソフトバンクが、イーアクセスに続いて米スプリント・ネクステル社を買収することが、「成長を希求してやまないある種の狂気」(2012年10月22日付、日本経済新聞「経営の視点」)なのかどうかは、筆者にはわからない。

 その記事では同時に、4期連続の赤字に苦しむソニーの原因はCFO(最高財務責任者)経営にある、と同社幹部が自戒していることを紹介していた。狂気かどうかはともかく、ソフトバンクは、ソニーのような「CFO不況」に直面することはないであろう。なぜなら、以下に示す分析結果によれば、ソフトバンクのビジネスモデルは「電波を売る不動産業」になるからだ。

 借金をしてビルを建て、そのビルを担保に借金を重ねて、新しいビルを建設する。不動産業界では、空室率を踏まえた需要を確実に予測できるのであれば、そのビジネスモデルが破綻することはない。

第60回コラムでは、マクドナルドが「ハンバーガーを売る不動産業」であることを証明した。今回は「電波を売る不動産業」という仮説が、ソフトバンクに当てはまるのかどうかを検証してみる。

ソフトバンクと三菱地所は
同じ不動産業

 ソフトバンクを不動産業と仮定するからには、「丸の内の大家さん」と呼ばれる三菱地所と比較するのがわかりやすい。これには、貸借対照表と損益計算書それぞれからのアプローチがある。

 貸借対照表からのアプローチとしては、総資産に占める固定資産の割合を調べる方法がある。次の〔図表 1〕は、2012年3月末時点のものだ。

 教科書などで貸借対照表が描かれる場合、流動資産の面積は大きく、固定資産の面積は小さく描かれることが多い。〔図表 1〕の「総資産に占める固定資産の割合」を見ると、三菱地所やソフトバンクは、そうした常識とは異なる「貸借対照表構造」を持っていることがわかる。第85回コラム(高島屋編)の〔図表10〕で、具体的な「貸借対照表構造」を描いているので、そちらも合わせて参照していただきたい。