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「出資比率を3分の1にするような形が解決策となりますよ」
ソフトバンクがイー・アクセスの買収を発表した直後、交渉に携わっていたある関係者が言った。
ソフトバンクは10月に業界4位のイー・アクセス買収を発表した。保有する電波の確保が大きな目的だったが、イー・アクセスを完全子会社化した後に、出資比率を引き下げることも明らかになった。孫正義社長も会見で「比率については複数の案がある」と認めているのだ。
その狙いは総務省対策である。なぜなら、ソフトバンクに対して「電波の二重取り」との批判が巻き起こったからだ。買収により、今年6月にイー・アクセスに認可されたばかりの希少性の高い電波がソフトバンクの手に移る。だが、それ以前にすでにソフトバンクにも電波は割り与えられており、そのため、国の割り当て議論がないがしろにされた形だったのだ。
総務省はこれまで一部の企業が電波を独占しないような施策を講じてきた。代表的な策が電波を申請する企業への出資比率を3分の1までに抑えることだ。KDDI傘下のUQコミュニケーションズもその例でJR東日本が資本参加している。
イー・アクセスも、使い勝手のよい新たな電波の割り当てを控えているため批判はかわしておきたいところだ。
ソフトバンクはこうした点を考慮して出資比率引き下げを検討しているようだが、肝心の引き受け手がどうも見つかっていないようなのだ。
それも無理はない。ソフトバンクは、イー・アクセスの買収に時価総額の3倍超の値をつけており、他社からすれば高過ぎるからだ。加えて、経営権は実質的にソフトバンクが握るため、手を挙げる企業など一部のメーカー以外ないというわけだ。
開設計画によれば今後、イー・アクセスは基地局整備などに約4000億円の資金調達が必要。そのリスクを負ってまで、批判かわしのための出資に応じる一般企業はないであろう。
(「週刊ダイヤモンド」編集部 小島健志)