1月24日、セブン&アイ・ホールディングスが、米フォートレス・インベストメント・グループへのそごう・西武の株式譲渡の延期を発表した。背景には、関係者の合意がないまま売却を“ゴリ押し”して巻き起こった「池袋動乱」がある。事業転売でもうけたいフォートレス、ディール成立の成功報酬が欲しい三菱UFJモルガン・スタンレー証券、そして池袋出店で競合に一泡吹かせたいヨドバシホールディングス――。特集『セブン解体 池袋動乱編』(全6回)の#3では、誰もが自身の利益を最優先する中、その利害を調整できずにいるセブン&アイの、1年間の稚拙な交渉の全内幕を明かす。(ダイヤモンド編集部 新井美江子)
善管注意義務違反を問われかねない?
そごう・西武売却で浮上する社外取のリスク
1月24日、本特集#1『【スクープ】セブン&アイのそごう・西武「売却スキーム」判明!ヨドバシ入居の調整難航で株式譲渡延期か』で指摘した通り、セブン&アイ・ホールディングスが百貨店子会社そごう・西武の株式譲渡の延期を発表した。「必要な所定の条件の充足に向けて交渉を継続」するとして、契約の実行日を当初予定の2月1日から「3月中」に延ばす。
「本当に大丈夫なのか」「グループ全体のレピュテーションリスクはどうなる」――。
譲渡契約の延期発表日から、さかのぼること11日。1月13日にセブン&アイが開催した取締役会では、契約の交渉責任者である小林強・セブン&アイ金融戦略室長が行った譲渡契約の報告に対し、社外取締役からそんな懸念の声が上がったという。
社外取らが心配するのは無理もなかった。昨年11月に締結された、米投資ファンドのフォートレス・インベストメント・グループとの株式譲渡契約の実行日は、半月後に迫っていた。だが、関係者の調整は難航し、西武池袋本店のある東京都豊島区や、そごう・西武労働組合の反発も表面化。社外取は善管注意義務を負っており、ディールに瑕疵があれば株主代表訴訟を受けかねない立場にある。
小林氏は「大丈夫です」と繰り返したというが、セブン&アイの経営陣にはこの1年間、そごう・西武の売却交渉を強硬に進めてきた、“大丈夫ではない”経緯がある。次ページでその全内幕を明らかにする。株式譲渡は最大2カ月延期されることになったが、果たして契約は実行に至るのか。